わが国における情報ネットワーク関連判例の動向
 
 
初出 2001/4  

最終更新 2009/12/28

 

岡 村 久 道

(本稿に記載した内容の詳細については拙著「電子ネットワーク時代の法律問題」(「日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成13年版>」2002年8月(第一法規出版) 869頁、「インターネットをめぐる法律問題」(「日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成14年版>」2003年8月(第一法規出版)1013頁)を参照されたい。また、ここに掲載した判例のうち主要なものは詳細につき 岡村久道 編「サイバー法判例解説(別冊NBL79号)」を参照されたい。)

 

1 はじめに

 
 わが国における情報ネットワーク関連の判例を振り返ると、1980年代に入ると業務用ネットワーク関連の判例が出現しはじめたが、その中心は金融機関の内部者のオンライン不正使用事件とカード不正使用事件であった。 しかし時代が進むと、他領域にも拡大していく。

 1990年代に普及したパソコン通信の事件では、会員間及び会員・パソコン通信運営会社間の紛争が発生し、また画像データの発信が可能となった結果、ポルノ画像データ配布行為をわいせつ物陳列罪とする判例も頻出した。

 1990年代後半を迎えて情報ネットワークの主流がパソコン通信からインターネットへと移行したことに伴い、情報ネットワーク関連紛争の主要舞台も、パソコン通信からインターネットへと移っている。

 

 
2 業務用ネットワーク関連の判例
 
 わが国では1980年代に入ると業務用ネットワーク関連の判例が出現しはじめた。業務用ネットワークは通常、閉鎖的なネットワークであるが、初期に紛争が集中したのは、銀行その他、金融機関のオンライン関連事件であった。金融オンラインでは、各支店に置かれた端末機から内部職員がデータを入力して操作する一方、外部者との接点は窓口での職員対応の他は現金 自動預払機である。こうした構造を反映して、そこにおいては、後述のカード犯罪とともに、金融機関の内部者によるオンラインの不正使用事件が多発し、中でも一連のオンライン詐欺事件が注目を浴びた。

 端緒となったのは、三和銀行事件に関する大阪地判昭和57(1982)年7月27日であった。しかし、この事件のような架空入金データの入力行為自体は、人を欺罔するものではないので詐欺罪の対象とならない。こうした問題を踏まえて昭和62(1987)年に刑法が一部改正され、コンピュータ犯罪に関する諸規定が新設された。

 下表記載のとおり、刑法一部改正後も同種のオンライン詐欺事件が多発する一方で、前記改正で新設された電子計算機使用詐欺罪によって処罰を受けるという流れが定着した。

 その代表例が、大阪地判昭和63(1988)年10月7日判時1295号151頁(第一勧銀事件)、東京地八王子支判平成2(1990)年4 月23 日(青梅信金事件)、東京高判平成5(1993)年6月29日高刑集46巻2 号(神田信金事件)である。東海銀行事件(名古屋地判平成9(1997)年1月10日判時1627号158頁)では、電話回線に接続したパソコンを操作してエレクトロニック・バンキングサービスを介し銀行のオンラインシステムに虚偽の振込送金情報を与え、合計16億円余の財産上不法の利益を得又は第三者をして得させたとの事案で、電子計算機使用詐欺罪の成立が認められた。

 以上のとおり、ごく最近まで、わが国の改正刑法が適用された情報ネットワーク関連判例は、基本的には全銀協オンラインに代表される閉鎖的な業務用ネットワークが主要舞台であり、それゆえに関与者も銀行内部者が中心であって、被害者も銀行に限定されている点で、共通の枠組が存在してきた。もっとも、東海銀行事件では、他の事件のような銀行内部に設置されたオンライン端末ではなく、銀行アンサーシステムが使用されたという点で、オンラインの不正操作手段に関し銀行外への場所的広がりがみられるが、やはり前述の枠組を大きく逸脱するものではなかった。

 なお金融オンラインにおける内部者もしくはそれに準じた者による、オンライン詐欺以外の主要な事案として、次の判例が存在する。

 まず、東京地判平成9年12月5日(城南信金不正告発事件)がある。本判例では、信用金庫支店長らが、預金事務センターのホストコンピュータに電磁的に記録保存された預金残高明細等をアウトプットさせ、同支店備付け用紙に印字した書類を私信用封筒に封入した事案で、窃盗罪の成立が認められた。

 第2に、労組分裂がらみの労働判例として東京高判昭和62(1987)年8月31日(前橋信金事件)がある。本判例では、オンライン端末機の無断操作を理由とする懲戒処分の効力が有効とされた。 

 外部委託業者の不正行為に関するケースも登場しており、比較的近時の東京地判平成10(1998)年7月7日(さくら銀行顧客データ不正漏えい事件)がある。本件では都市銀行向けプログラム開発業務に従事していた外部委託業者が、持参したフロッピーディスクに顧客データをコピーして持ち出しており、データ(電磁的記録)自体は財物とは言えず、窃盗罪や横領罪の客体とならないので、データ持ち出し行為は不起訴となったが、同時に業務上預かり保管中の項目説明書等の資料4枚をコピーして名簿業者に売却した点をとらえて、資料に関する業務上横領罪の成立が認められた。

 完全な外部者の不正行為に目を転じると、金融ネットワークと外部者との接点は、前述のとおり窓口と現金預払機である。前者が窓口職員との接点であるとすれば、後者では人が介在することなく、ネットワーク自体と直接の接点が生じ、そこでは真正な権利者か否かを確認するために、カードとパスワードとを併用する方法が一般的である。

 後者との関連において、オンラインに接続された現金自動預払機に対しキャッシュカードを悪用した事件も続出した。

 悪用方法としては、真正なカードが冒用される場合と、偽造カードが使用される場合とがある。前者においてはさらに、真正なカードをそのまま使用するケースと、真正なカードに何らかの方法で手を加えて使用されるケースとがある。

 こうした行為では、使用されたカードが真正か偽造カードかを問わず、現金を引き出すことが主要な使用目的であって、財物たる現金の占有を取得する点で窃盗罪と評価される。こうした見地から、東京高判昭和55年3月3日(三和銀行窃取キャッシュカード事件)では、窃取した真正なカードで自動支払機から現金を取り出した行為につき、窃盗罪の成立が認められた。

 大阪地判昭和57年9月9日(近畿相互銀行事件)では、偽造カードで払戻を受けた行為について、やはり窃盗罪の成立が認められたほか、銀行カードの磁気ストライプ部分に私文書偽造罪の文書性が認められている。

 前述のとおり、1987年に刑法が改正されると、偽造カードでの現金払い出し行為につき、窃盗罪のほか、前記改正で新設された私電磁的記録不正作出罪、同供用罪の成立を認めた東京地判平成元年2月22日(富士銀行等不正キャッシュカード事件)が登場する。

 民事判例では、預金者以外の者が真正なキャッシュカードで正しい暗証番号を入力して現金自動支払機から預金の払戻しを受けた事案で免責約款により銀行の免責を認めた最判平成5年7月19日(富士銀行キャッシュカード免責事件)が有名である。

 同様にクレジットカード犯罪も多発している等の事態を踏まえ、平成13(2001)年の刑法一部改正によって、クレジットカードなどの支払用カードや、キャッシュカードなど預貯金引出用カードを客体とする電磁的記録不正作出等の諸規定(刑法163条の2ないし163条の5)が新設された。刑法161条の2第1項の電磁的記録不正作出罪の「支払用カードを構成する電磁的記録」に係る特則という位置付けが与えられている。

 以上のとおり、外部者による不正行為も、ほぼ金融機関に関連したカード犯罪に限られてきた。

 ところが最近では金融機関 でも、オンライン詐欺やカード犯罪以外の事件が発生している。その中心はプライバシー関連であり、前述のさくら銀行顧客データ不正漏えい事件も、このような類型に該当するが、消費者金融プライバシー権侵害事件の京都地判平成15(2003)年10月23日判例集未登載では、大手消費者金融会社が、債務者の氏名と同音で漢字1字違いという類似の氏名である者に対して、債務者と間違えて支払の催促を行い、人違いが判明した後も、信用情報機関等に登録したその者の個人情報を抹消せず、再度の支払催促をしたことが、その者のプライバシー権を侵害する不法行為に当たるとされた。

 コンピュータ処理が社会の隅々の業務へと次第に浸透していくにつれて、金融機関以外における業務用ネットワーク事件も増加している。

 まず、東京地判昭和62(1987)年9月30日(京王百貨店顧客名簿不正漏えい事件)では、百貨店に勤務するコンピュータ技術者が、複写目的で同百貨店の顧客名簿が入力された磁気テープを電算室から持ち出した事案で窃盗罪が成立するとした。

 また、宇治市住民基本台帳データ漏えい事件(京都地判平成13(2001)年2月23日判例集未登載)では、京都府宇治市が、メンテナンスを委託していた電算業者に住民基本台帳データ約22万人分を預けていたところ、これをアルバイト大学院生が、自分で持参した光磁気ディスク(MO)にコピーして無断で持ち出し、名簿業者に売却したという事案であったが、住民からの損害賠償請求について、宇治市にプライバシー権侵害を理由とする責任が認められている。控訴審の大阪高判平成13(2001)年12月25日も原審を支持している。なおこの事件では刑事処分は不起訴となっている。前記さくら銀行顧客データ不正漏えい事件と同様、持参した媒体に入れてデータを持ち出していたからであり、この点が現行法による刑事処分の限界を示している。

 以上の事件は、さくら銀行顧客データ不正漏えい事件とともに、業務用ネットワークの中心に位置するコンピュータに保管された大量の個人情報漏えい事件という点で共通しており、こうした大量の個人情報がマーケティングのために重要な価値を有するに至っていることを背景としている 。他にも、衛星放送サービス「スカイパーフェクTV」の一つとして被告株式会社が「スターデジオ100」の営業名で行っている公衆送信サービスに関し、著作隣接権(レコード製作者の権利)に基づく差止請求等を否定したスターデジオ事件の東京地判平成12(2000)年5月16日判タ1057号221頁が出ていることを考えると、業務用ネットワーク事件の舞台が金融機関にとどまることなく他の領域へと拡大し続けているという事実を反映していると同時に、問題となっている法益も、営業秘密、個人情報、知的財産権などへと多様化していることを示している。

 1999年の住民基本台帳法改正に基づき2003年に本格稼働を開始した住民基本台帳ネットワークシステム関連でも、大阪住基ネット訴訟事件の大阪地判平成16(2004)年2月27日 判時1857号92頁、富山住基ネット訴訟事件の富山地判平成16(2004)年6月30日判例集未登載が言い渡されている。前者は、住民基本台帳ネットワークシステムにより人格権等が侵害され、精神的損害を被ったと主張して、原告らが居住する被告各市に対し、国家賠償法1条に基づいて求めた慰謝料請求が棄却された事例、後者は富山市の住民である原告らが、被告に対し、被告が住民基本台帳法に基づき原告らに11桁の番号を付与した行為は、憲法13条で保障されている原告らのプライバシー権を侵害する違法な行政処分であると主張して取消しを求めた事案で、本件行為は取消訴訟の対象となる行政処分とは解されないから不適法であるとして、却下した事例である。
 

 

 
事件名 判 例 概 要
三和銀行窃取キャッシュカード事件 東京高判昭和55(1980)年3月3日 刑月12巻3号67頁・判時975号132頁 窃取したキャッシュカードを用いて自動支払機から現金を取り出した行為につ いて窃盗罪の成立を認めた。
 
三和銀行オンライン詐欺事件
 
大阪地判昭和57(1982)年7月27日判時1059号158頁(夏井先生サイト)
 
銀行の女子行員が、同行の他支店に架空人名義の普通預金口座を開設の上、オンラインシステム端末機を操作して、右預金通帳お預り欄に振替入金があり、これを同支店が代受けしたように偽りの記帳をし、同時に入金データを入力して、預金払戻請求書と偽りの記帳をした預金通帳を窓口係員に提出し、払戻請求の金領が実際に入金されているものと誤信させ、預金払戻の名目で現金等を騙取した事案で、私文書偽造、同行使罪、詐欺罪等の成立を認めた事例。
近畿相互銀行事件
 
大阪地判昭和57(1982)年9月9日判時1067号159頁 銀行のキャッシュカードの磁気ストライプ部分について私文書偽造罪の文書性を認めた事例。
 
前橋信金事件第一審


 
前橋地判昭和61(1986)年5月20日判時1253号136頁(夏井先生サイト)

 
信用金庫(被告)の事実上分裂した組合の代表者たる職員(原告)が、支店職員をして被告のオンライン端末機を正規の手続を経由せず無断で操作させ、これにより同信用金庫従業員組合会計名義の預金残高を確認したことが、就業規則違反に該当するとして懲戒処分(停職)を受けた事案で、被告に何らの損害を与えたものでないこと等を理由に、社会通念上相当性を欠くとして前記懲戒処分の無効確認請求を認容した事例。
前橋信金事件控訴審 東京高判昭和62(1987)年8月31日判時1253号134頁(夏井先生サイト) 原判決を取り消し、原審被告の請求を棄却。

 
京王百貨店事件
 
東京地判昭和62(1987)年9月30日判時1250号144頁 京王百貨店に勤務するコンピューター技術者が、複写目的で同百貨店の顧客名簿が入力された磁気テープを、電算室から持出したときは、窃盗罪が成立する。
第一勧銀事件

 
大阪地判昭和63 (1988)年10月7日判時1295号151頁(夏井先生サイト) 銀行の行員がオンライン端末を操作し、コンピュータに対し自己の預金口座等に振替入金があったとする虚偽情報を与え、同コンピュータに記録された同口座の預金残高を書き換えたことが電子計算機使用詐欺罪に該当するとした。
富士銀行等不正キャッシュカード事件


 
東京地判平成元(1989)年2月22日判時1308号161頁(夏井先生サイト)




 
ビデオテープを貼り付けたキャッシュカード大のプラスチック板の磁気ストライプ部分に印磁し、富士銀行の預金管理等の事務処理の用に供する事実証明等に関する電磁的記録を不正に作出し、不正に作出したカードを、同銀行が加盟している預金管理等のためのオンラインシステムに接続されている各現金自動預入払出機等にそれぞれ挿入して、これを同銀行外7行の前記事務処理の用に供して各機等を作動させ、右各機等から住友銀行上野駅前支店の支店長ほか6名管理にかかる現金を払い出した行為につき、私電磁的記録不正作出罪、同供用罪、窃盗罪の成立を認めた。
青梅信金事件

 
東京地八王子支判平成2(1990)年4月23日判時1351号158頁(夏井先生サイト) オンラインの電信為替送金システムを悪用し、勤務先のコンピュータ端末から不正振込発信し、これと接続された振込先銀行のコンピュータに記憶された預金口座の残高書換行為が電子計算機使用詐欺罪に該当するとした。
変造テレホンカード事件上告審決定  最三小決平成3(1991)年4月5日刑集45巻4号171頁
(夏井先生サイト)
テレホンカードのその磁気情報部分に記録された通話可能度数を権限なく改ざんした上、その旨を告げてこれを売り渡した行為は、有価証券変造及び変造有価証券交付の各罪に当たる旨の原判決の判断を正当とした。
神田信金事件第一審


 
東京地判平成4(1992)年10月30日判時1440号158頁(夏井先生サイト)

 
信用金庫の支店長が、部下に命じて支店に設置されたオンラインの端末機を操作させ、振込入金等の事実がないにもかかわらず、第三者および自己名義の当座預金口座に振込入金等があったとする電子計算機処理をさせた行為につき、本位的訴因である電子計算機使用詐欺罪の成立を否定し、商法の特別背任罪の成立を認めた。
神田信金事件控訴審



 
東京高判平成5 (1993)年6月29日高刑集46巻2号(夏井先生サイト)


 
信用金庫の支店長が、部下に命じて支店に設置されたオンラインの端末機を操作させ、振込入金等の事実がないにもかかわらず、第三者および自己名義の当座預金口座に振込入金等があったとする電子計算機処理をさせた行為につき、主位的的訴因(電子計算機使用詐欺罪)及び第一次予備的訴因(業務上横領罪)の成立を否定して二次予備的訴因(商法の特別背任罪)の成立を認めた原審認定を誤りとし、電子計算機使用詐欺罪にあたるとした事例。
富士銀行キャッシュカード免責事件 最判平成5(1993)年7月19日判時1489号111頁
 
預金者以外の者が真正なキャッシュカードを使用して正しい暗証番号を入力し現金自動支払機から預金の払戻しを受けた事案で免責約款により銀行の免責を認めた。
ブルーボックス事件
 
東京地判平成7(1995)年2月13日判時1529号158頁
判決文
通話料金の支払を免れようと企て、自己の使用する電話回線(本件電話回線)から、KDDの電話交換システムに対し不正の指令を与え、KDDの電話交換システムを認識させて接続させ、更に、本件電話回線から、コンピュータソフト「ブルーボックス」を使用して作出した、KDDの電話交換システムからIODC対地国の電話交換システムに送信される回線制御を司る業務用信号に模した不正信号を、IODC対地国の電話交換システムに送り出すことによって、右電話交換システムにIODCサービスの申込みを取り消させた上、着信国の着信人との間に電話回線を接続させるとともに、IODC対地国の電話交換システムからKDDの電話交換システムに対して送信されるIODCサービスの申込みが取り消されたことを確認する旨の信号の送信を妨害して、KDDの電話交換システムがIODCサービスの申込みが取り消されたことを確認できない状態に置き、KDDの電話交換システムをして、IODCサービス利用による回線使用が継続しているものと誤認させて、IODC対地国を中継国として着信国の着信人との間で国際通話を行い、KDDの電話料金課金システムに対して虚偽の通話情報を伝送させ、これに基づき右電話料金課金システムにその旨の不実のファイルを作出させて右国際通話の通話料金相当額の支払を免れ、もって、人の事務処理に使用する電子計算機に不正の指令を与えて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作り、右国際通話に相当する財産上不法の利益を得た事案で、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた。
某信用組合事件
 
東京地判平成7(1995)年12月26日判時1577号142頁
判決文
1万円紙幣大の紙片の束の上下に、真券の1万円紙幣を挟んで作った偽の偽の札束を、真券の1万円紙幣の札束であるかのように装って信用組合に入金し、情を知らない信用組合支店係員らに命じて、同支店に設置されたオンラインシステムの端末機を操作させ、同信用組合システム本部情報システム部に設置されている電子計算機に、各普通預金口座に同表「入金額」欄に記載された各金額の入金の事実があったとする虚偽の情報を与え、右電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録された右各口座の預金残高が、右入金額を加算した金額であるとする財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作り、もって財産上不法の利益を得た等の事案で、詐欺、電子計算機使用詐欺、覚せい剤取締法違反の成立を認めた。
パッキーカード事件
 
長野地裁諏訪支判平成8(1996)年7月5日判時1595号154頁
判決文
使用済みパチンコ用プリペイドカード(パッキーカード)の磁気情報部分に記載された使用可能残高を改ざんし、これをパチンコ遊技機に併設されたシステム端末であるカードユニット(自動玉貸装置)のカード挿入口に挿入してパチンコ玉を排出させ、パッキーカードの消費金額名下に財産上不法の利益を得させようとした事案で、有価証券変造、同行使、電子計算機使用詐欺、同未遂の成立が認められた。
大阪自動契約機カードローン詐欺事件
 
大阪地判平成8(1996)年7月8日判タ960号293頁(夏井先生サイト)
 
金融会社の無人店舗に設置された自動契約受付機を悪用して他人名義の運転免許証を偽造するなどした上、他人になりすまして融資金入出用カードの交付を受け、同カードを使用して現金自動入出金機から現金を取得した等の行為について、有印公文書偽造・同行使、詐欺、窃盗等の成立を認めた。
東海銀行事件 名古屋地判平成9 (1997)年1月10日判時1627号158頁(夏井先生サイト) 被告人両名が、他の2名と共謀の上、銀行が行っているアンサー利用型パソコンサービスの都度指定方式による振込サービスを利用して財産上不法の利益を得ようと企て、電話回線に接続したパソコンを操作し、NTTデータ通信提供の銀行アンサーシステムを介して、同行の業務のオンライン事務処理に使用されている電子計算機に対し、共犯者経営の会社及び知人の口座に送金があったとする虚偽の情報を与え、同口座の預金残高を増加させて、財産権の得喪、変更にかかる不実の電磁的記録を作り、もって財産上不法の利益を得又は第三者をして得させたときは、電子計算機使用詐欺罪の共同正犯が成立するとした事例。
コンピュータ入力ミス振込送金事務遅延事件 東京地判平成9(1997)年9月10日 金融商事1043号49頁 金融機関のコンピュータ入力ミスに起因した振込送金事務の遅延による損害賠償請求を認めなかった事例。
城南信金不正告発事件
 
東京地判平成9(1997)年12月5日判時1634号155頁(夏井先生サイト) 信用金庫支店長らが、預金事務センターのホストコンピュータに電磁的に記録保存されている預金残高明細等をアウトプットさせ、同支店備付け用紙に印字した書類を私信用の封筒に封入した事案で、窃盗罪の成立を認めた。
信用金庫の元専務理事が、同金庫支店長に指示して、同支店備付けの営業用汎用端末機を操作させ、同金庫事務センターのホストコンピュータに電磁的に記録・保存されている同金庫会長及びその家族の預金残高明細等をアウトプットさせて同支店備付け用紙に印字した書類を、同元専務理事に郵送するため同人あての封筒に封入させた事案で、同書類の窃盗罪の共同正犯が成立するとした事例。
浦和フロッピーディスク差押事件抗告審決定  最二小決平成10(1998)年5月1日刑集52巻4号275頁
(夏井先生サイト)
令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは内容を確認することなしにパソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許される旨の原決定を正当とした。
さくら銀行顧客データ不正漏えい事件 東京地判平成10(1998)年7月7日判時1683号160頁 都市銀行向けプログラム開発業務に従事していた者が、メイン顧客データをフロッピーディスクにコピーして、業務上預かり保管中の項目説明書等の資料4枚をコピーした上、名簿図書館に売却した事案で、資料に関する業務上横領罪の成立を認めた。
スターデジオ事件 東京地判平成12(2000)年5月16日判タ1057号221頁知的財産権判例検索 )  衛星放送サービス「スカイパーフェクTV」の一つとして被告株式会社が「スターデジオ100」の営業名で行っている公衆送信サービスに関し、著作隣接権(レコード製作者の権利)に基づく差止請求等が否定された事案。 
通信衛星放送サービスの、音楽を中心としたラジオ番組において、原告らがレコード製作者としての複製権を有する各音源を公衆に送信するにあたり、前記各音源に係る音楽データを保有サーバに蓄積する行為は各レコードの「複製」に当たるが、放送事業者が、レコードを自己の放送のために自己の手段により一時的に録音する行為に該当し、著作権法102条1項によって準用される同法44条1項が適用されるので、前記複製権の侵害とはいえない、番組において送信された前記各音源についての音楽データを受信した個々の受信者がこれを受信チューナーに接続したオーディオ機器によってMDに録音する行為は、一般的に、同法102条1項によって準用される同法30条1項で許容される「私的使用のための複製」に当たるから、原告らの各レコードについてのレコード製作者としての複製権を侵害するものとはいえず、原告らの違法な私的複製の教唆・幇助による複製権侵害の主張は理由がない、同番組において受信された前記各音源を受信チューナーのRAMに蓄積する行為は、同法上の「複製」には該当せず、したがって、原告らが有する前記各レコードについてのレコード製作者としての複製権を侵害するものではないとした事例。
宇治市住民基本台帳データ不正漏えい事件 第一審 京都地判平成13(2001)年2月23日判例集未登載 毎日新聞記事 1999年5月、京都府宇治市の住民基本台帳データ約22万人分が不正流出した事実が判明した。市がメンテナンスを委託していた電算業者に児童検診用データを預けていたところ、電算業者のアルバイト大学院生が自分で持参した光磁気ディスク(MO)にコピーして持ち出し、名簿業者に無断売却したという事件であった。この事件で京都地裁平成13年2月23日は、住民からの損害賠償請求について、宇治市にプライバシー権侵害を理由とする責任を認めた。
宇治市住民基本台帳データ不正漏えい事件 控訴審 大阪高判平成13(2001)年12月25日 サイバー法判例解説190頁 判決文 毎日新聞記事 市の控訴を棄却。
宇治市住民基本台帳データ不正漏えい事件 上告審

 

最決平成14(2002)年7月11日判例集未登載  毎日新聞記事 市の上告を棄却。
ヒットワン事件 大阪地判平成15(2003)年2月13日 判時1842号120頁 判決文 音楽著作権の管理等を目的とする音楽著作権等管理事業者である原告(社団法人日本音楽著作権協会)が、通信カラオケ装置のリース業を営む被告に対し、被告が原告の管理に係る音楽著作物の使用について許諾を得ていない社交飲食店93店舗に対し通信カラオケ装置をリースしているとして、著作権法112条1項に基づいて、同飲食店に対して同音楽著作物のカラオケ楽曲データ(歌詞データを含む。)の使用禁止措置をとることを請求している事案で、請求が認容された事例。
消費者金融プライバシー権侵害事件 京都地判平成15(2003)年10月3日判例集未登載 判決文 大手消費者金融会社が、債務者の氏名と同音で漢字1字違いという類似の氏名である者に対して、債務者と間違えて支払の催促を行い、人違いが判明した後も、信用情報機関等に登録したその者の個人情報を抹消せず、再度の支払催促をしたことが、その者のプライバシー権を侵害する不法行為に当たるとされた事例。
防衛庁行政文書開示請求者リスト事件 東京地判平成16(2004)年2月13日判タ1173号204頁
 
原告が,被告に対し,防衛庁の職員が,原告を含め防衛庁長官に対して行政文書開示請求をした者のリストを作成し配布したことが,原告の名誉を毀損するとともに,原告のプライバシーを侵害したものであるとして,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償等を求めた事案。
大阪住基ネット訴訟事件 大阪地判平成16(2004)年2月27日 判時1857号92頁 判決文 判決文 住民基本台帳ネットワークシステムにより人格権等が侵害され、精神的損害を被ったと主張して、原告らが居住する被告各市に対し、国家賠償法1条に基づいて求めた慰謝料請求が棄却された事例。
業務上横領、電気通信事業法違反被告事件 東京地判平成16(2004)年5月7日判例集未登載 判決文 消費者金融業等を目的とする株式会社Aの従業員が、同社代表取締役会長兼社長等と共謀の上、盗聴用の発信機及び自動録音装置付き受信機を用いて電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵し、同社の機器及び用紙を使用して同社及びその関連会社の禀議書を複写した書面,株式会社Aの顧客情報を印字した書面(以下「顧客台帳」という。)並びに株式会社Nが管理する資金需要者の信用情報を印字した書面(以下「情報センター照会履歴」という。)について、いずれも株式会社Aのために業務上預かり保管中、平成14年9月21日付けで同社を解雇された後もこれらを同社に返却せず、同年10月上旬ころ同都中野区内に所在のO事務所において、ほしいままに、自己の用途に使用する目的で、そのうちの禀議書を複写した書面24通、顧客台帳7枚及び情報センター照会履歴60枚をOに引き渡して横領した事案
富山住基ネット訴訟事件 富山地判平成16(2004)年6月30日判例集未登載 判決文 判決文 富山市の住民である原告らが、被告に対し、被告が住民基本台帳法に基づき原告らに11桁の番号を付与した行為は、憲法13条で保障されている原告らのプライバシー権を侵害する違法な行政処分であると主張して取消しを求めた事案で、本件行為は取消訴訟の対象となる行政処分とは解されないから不適法であるとして、却下した事例。
杉並区住基ネット訴訟事件 東京地判平成17(2005)年1月26日判例集未登載 判決文 杉並区の住民である原告が、杉並区が住民基本台帳法で定められた住民基本台帳ネットワークシステムに参加していないのは違法であり、そのような状況下で住基ネット関連の費用を支出しているのは違法であるなどと主張して、地方自治法242条の2第1項1号に基づいて、被告杉並区政策経営部情報システム課長に対し、住基ネット関連機器の賃借料の支出の差止めを求めるとともに(第1事件)、同項4号前段に基づいて、被告杉並区長に対し、住基ネット関連の費用に係る財務会計行為を行った当該職員に損害賠償の請求をすることを求めた(第2事件)事案。
富山住基ネット訴訟事件控訴審 名古屋高金沢支判平成17(2005)年2月23日 判タ1198号133頁  判決文 富山住基ネット訴訟事件の控訴審判決。
選挙無効確認請求事件 名古屋高判平成17(2005)年3月9日 判時1914号54頁判タ1208号141頁 判決文 可児市議会議員選挙について,同選挙に使用した投票機が電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律4条1項1号,4号,5号及び8号の条件を一時的に具備していない状態にあったこと,及び可児市選管の選挙管理上の過誤により,最下位当選者の得票総数と次点者の得票総数が逆転する虞があり,同選挙の結果に異動を及ぼす虞があるとして,選挙を無効とした事例。
名古屋住基ネット訴訟公金支出行為等差止め事件 名古屋地判平成17(2005)年4月28日判例集未登載 判決文 住基ネットが憲法13条等に違反し,これを前提とする住基カードに関して公金を支出すること等が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項1号による公金支出行為等の差止めと,同項4号による損害賠償を市長に請求するように求めた住民訴訟において,住基ネットは,ただちに違憲とはいえず,また,セキュリティ対策についても,現時点の技術水準に対応した保護措置が講じられているなどとして,請求を棄却した事案。
金沢住基ネット訴訟事件 金沢地判平成17(2005)年5月30日 判タ1199号87頁・判時1934号3頁 判決文 住民基本台帳ネットワークシステムを運用している石川県及び地方自治情報処理センターに対して,原告らの個人情報について同システムの運用の差止めが認められた事例。
名古屋住基ネット訴訟事件 名古屋地判平成17(2005)年5月31日判タ1194号108頁 ・判時1934号3頁
 判決文1 判決文2
愛知県の住民である原告らが、住基ネットは原告らの人格権、プライバシー権、公権力による包括的管理からの自由を侵害し、あるいは侵害の危険性があるものであるとして、被告愛知県及び被告LASDECに対し、住基ネットの差止めと、氏名、住所、生年月日、性別の4情報及び住民票コード並びにこれらの変更情報の磁気ディスクからの削除を求め、被告国及び被告愛知県に対し国家賠償法1条に基づき損害賠償を求めた事案で、請求をいずれも棄却した事例。
選挙無効確認請求事件 最二小決平成17(2005)年7月8日判例地方自治276号35頁
 
民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
福岡住基ネット訴訟事件 福岡地判平成17(2005)年10月14日 判時1916号91頁 住民基本台帳ネットワークシステムを運用している福岡県及び地方自治情報処理センターに対して,原告らの個人情報について同システムの運用の差止めが 棄却された事例。
選撮見録事件 大阪地判平成17(2005)年10月24日判時1911号65頁 判決文 大阪市に所在するテレビ放送事業者である原告らが、被告が販売する別紙物件目録記載の商品(以下「被告商品」という。)が、原告らがテレビ番組の著作者として有する著作権(複製権及び公衆送信権)並びに原告らが放送事業者として有する著作隣接権(複製権及び送信可能化権)の侵害にもっぱら用いられるものであると主張し、上記各権利に基づいて、被告に対し、その商品の使用等及び販売の差止め並びに廃棄を請求した事案で、請求を 一部認容した事例。
大阪住基ネット差止訴訟事件 大阪地判平成18(2006)年2月9日 判タ1207号91頁  判決文 判決文 住民基本台帳ネットワークシステムを定める法律及びその施行が,原告らの主張する公権力の管理の客体に置かれない権利及び自己情報コントロール権を侵害するものではないとして,原告らの本人確認情報の提供等の差止め,同本人確認情報の抹消及び国家賠償請求等を棄却した事例。
千葉住基ネット差止訴訟事件 千葉地判平成18(2006)年3月20日  判決文 原告ら住民が,プライバシー権の侵害などを理由として,千葉県が国の機関等に原告らに関する氏名,住民票コード等の本人確認情報を提供することなどの差止め,同情報の住民基本台帳ネットワークからの削除等を請求した事案について,同ネットワークにおいて原告らの個人情報が漏れたりなどする相当の具体的なおそれがないとして,請求が棄却された事例。
東京住基ネット受信義務確認等請求事件 東京地判平成18(2006)年3月24日 判時1938号37頁  判決文 原告は、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の導入に当たって、住基ネットには個人情報の流出等の危険が。存在するとして、被告東京都に対し、住基ネットの安全性が確認されるまでの間、杉並区民のうち、住民基本台帳法30条の5第1項所定の本人確認情報(本人確認情報)を被告東京都へ通。知することを受諾した者に係る本人確認情報のみを被告東京都に通知し、非通知希望者に係る本人確認情報を被告東京都に通知しない方式によって住基ネットへ参加することを申し入れたところ、被告東京都からこれを拒否された。本件のうち、請求の趣旨第一項に係る訴えは、原告が、杉並区民のうちの通知希望者に係る本人確認情報を住基ネットを通じて被告東京都に送信する場合に、被告東京都はこれを受信する義務があると主張して、被告東京都に対し、その確認を求めるものである。また、請求の趣旨第二項に係る訴えは、被告東京都は、前記受信義務を怠り、また、被告国は、被告東京都に対して適切な指導を行わないとともに、原告に対し横浜市に対する対応と異なった対応をして、その結果、原告に損害を与えたなどと主張して、被告らに対し、国家賠償法1条に基づく損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるものである。本判決は請求の一部を却下し、その余の請求を棄却した。
東京住基ネット1次訴訟事件 東京地判平成18(2006)年4月7日 請求棄却。
和歌山住基ネット訴訟事件 和歌山地判平成18(2006)年4月11日 請求棄却。
名古屋住基ネット訴訟事件控訴審判決 名古屋高判平成18(2006)年4月19日 判決文 名古屋市の住民である控訴人らが,住民基本台帳法(平成11年法律第133号による改正後のもの。)に基づく住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が憲法13条等に違反するものであり,これを前提とする住民基本台帳カードの交付に関して公金を支出することや,その原因となるべき契約を締結する行為なども違法であると主張して,被控訴人に対し,@地方自治法242条の2第1項1号に基づき,上記公金支出行為等の差止めと,A同項4号に基づき,支出が確定した公金2000万円の損害賠償を市長の地位にあったBに請求するように求める住民訴訟の控訴審である。本判決は 控訴を棄却した。
兵庫住基ネット訴訟事件 神戸地判平成18(2006)年6月9日 請求棄却。
西東京市住民票コード付定取消訴訟事件 東京地判平成18(2006)年7月14日 請求棄却。
東京住基ネット2次訴訟事件 東京地判平成18(2006)年7月26日 請求棄却。
コンピュータネットワークセキュリティ国際セミナー講演事件 東京地判平成18(2006)年10月3日  判決文 総務省の後援するコンピュータネットワークセキュリティに関する国際セミナーにおける講演につき,総務省の担当職員が,後援者として,主催者に対し,上記講演の問題点や懸念される点を指摘し,その解消を求めた行為が検閲に当たらず,表現の自由を侵害する違法行為にも当たらないとされた事例。
横浜住基ネット差止訴訟事件 横浜地判平成18(2006)年10月26日 請求棄却。
大阪住基ネット差止訴訟事件控訴審 大阪高判平成18(2006)年11月30日 判時1962号11頁 請求一部認容。
名古屋住基ネット訴訟事件控訴審判決 名古屋高判平成18(2006)年12月11日 判時1962号11頁 判決文 控訴棄却。
名古屋住基ネット訴訟事件控訴審判決 名古屋高判平成19(2007)年2月1日 判決文 控訴棄却。前掲名古屋地判平成17(2005)年5月31日の控訴審判決。
さいたま住基ネット差止訴訟事件 さいたま地判平成19(2007)年2月6日  判決文 請求棄却。
大分住基ネット差止訴訟事件 大分地判平成19(2007)年5月21日 請求却下。
社保庁LAN事件 東京地判平成20(2008)年2月26日 被告の機関である社会保険庁の職員が,ジャーナリストである原告の著作物である雑誌記事を,社会保険庁LANシステム中の電子掲示板システムの中にある新聞報道等掲示板にそのまま掲載し,原告の複製権又は公衆送信権を侵害したとして,原告が,被告に対し,上記複製権又は公衆送信権侵害を選択的請求原因として,同掲載記事の削除及び原告のすべての著作物についての掲載の予防的差止め並びに損害賠償の支払を求めた事案。
住基ネット事件最高裁判決 最判平成20(2008)年3月6日 民集62巻3号665頁  判決文 住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集,管理又は利用する行為は,当該住民がこれに同意していないとしても,憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。
 
 
3.パソコン通信関連判例
 
 1990年代に入ってパソコン通信の普及時期を迎えると、下表記載のように、これを舞台とする紛争が登場しはじめた。

 業務用ネットワークと異なり、パソコン通信は、大衆が会員として自由に参加でき、しかも個人でも不特定多数人に向けて情報を発信できるという特徴がある。これを反映して、ネットワーク詐欺においても、業務用ネットワークの場合とは全く異なる類型の事件が登場した。具体例が京都地判平成9(1997)年5月9日(ニフティ電子掲示板詐欺事件)である。本判例では、パソコン通信会員に成りすました被告人が電子掲示板や電子メールで虚偽の販売情報を流して他会員から振込入金を受け金銭を詐取した事案で詐欺罪等の成立が認められた。

 パソコン通信の普及は、会員間及び会員・パソコン通信運営会社間における紛争の発生をもたらした。代表的なケースとして、東京地判平成9年5月26日(ニフティ現代思想フォーラム事件)では、パソコン通信会員が他会員を中傷する電子会議室への書き込みを名誉毀損とした。書き込みを放置した会議室担当シスオペの責任も一部認容され、シスオペの雇い主のパソコン通信運営会社にも使用者責任が認められた。これに対し、控訴審の東京高判平成13(2001)年9月5日では、シスオペおよびの雇い主のパソコン通信運営会社の責任は否定された。ニフティ「本と雑誌のフォーラム」事件に関する東京地判平成13(2001)年8月27日では、パソコン通信ニフティの電子会議室で名誉毀損にあたる書き込みをされたとして、ニフティを相手取って、会員情報の開示と損害賠償を求めた訴えに対し、対抗言論の考えに立って名誉毀損は成立しないとして、請求を棄却した。
 東京地判平成9年12月22日(PC-VANチャット・ログ事件)では、会員がパソコン通信で他会員による会員番号不正使用の疑惑を指摘した発言を掲示した行為が従前の経緯に照らし他の会員の社会的評価を低下させたものといえないとして、名誉毀損の成立を否定し、プライバシー権侵害、著作権侵害の主張も退けた。プライバシー関連では、神戸地判平成11年6月23日判時1700号99頁(掲示板プライバシー侵害事件)は、パソコン通信の掲示板に他会員の個人情報を無断で書き込んだ行為がプライバシー権を侵害するとしている。

 パソコン通信の会員が電子掲示板上にパソコン通信サービス運営業者を批判する書き込みをを行ったので、同業者が行った会員契約の解除の有効性が争われたケイネット事件も登場している。本事件に関する東京地判平成10年12月21日は解除を無効としたのに対し、横浜地判平成10年12月25日は解除を有効とした。控訴審である東京高判平成11年9月8日および東京高判平成12年1月19日(両判決とも判例集未登載)は、ともに信頼関係破壊を認めて解除を有効としている。

 パソコン通信の発達により、文字データだけでなく、画像データの自由な発信も可能となった結果、パソコン通信上でのポルノ画像データ配布行為がわいせつ物陳列罪に問われる事件も多数登場した。横浜地川崎支判平成7年7月14日(P-STATION事件)および京都簡裁略式命令平成7年11月21日MEDIA大阪事件)においては、被告人側が争わなかったこともあり、刑法175条違反が単純に認められた。これに続く札幌地判平成8年6月27日(モンキータワー事件)、京都地判平成9年9月24日(アルファネット事件)においては構成要件該当性が争われたが、ともに有罪となった。後者は控訴審の大阪高判平成11年8月26日でも有罪となり、上告審の最三小判平13・7・16刊行物未登載も、上告を棄却している。上告審判決は、職権判断で、「被告人がわいせつな画像データを記憶、蔵置させたホストコンピュータのハードディスクは、刑法175条が定めるわいせつ物に当たる」、「被告人の行為は、ホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置された画像データを不特定多数の者が認識できる状態に置いたものというべきであり、わいせつ物を『公然と陳列した』ことに当たる」とした。

 以上の判例は、判決言い渡し日だけを見れば、ごく最近のものもあるが、1990年代中盤以前に発生した紛争が主流であり、1990年代後半を迎えて 情報ネットワークの主流がインターネットに移行するに伴い、次第に情報ネットワーク関連紛争の主要舞台もインターネットへと移った。

 

 
事件名 判 例 概 要
コムライン事件

 
東京地判平成6(1994)年2月18日判時1486号110頁
(判決文)
コンピュータ通信網による情報提供サービス及び各種情報の収集、処理並びに販売等を目的とする会社が新聞記事を要約して英訳し、他の記事と共にファックス、オンライン等で頒布、送信した事案で、新聞記事の著作権(翻案権、複製権、有線送信権)侵害を認定し、損害賠償請求を認容。
P-STATION事件
 
横浜地川崎支判平成7(1995)年7月14日(園田先生サイト) はじめてパソコン通信を使ったサイバーポルノ画像データ配布行為が、わいせつ物陳列罪で有罪とされた事件。被告人側は刑法175条の成立を争わず。
MEDIA大阪事件
 
京都簡裁略式命令平成7(1995)年11月21日(園田先生サイト) パソコン通信を使ったサイバーポルノ画像データ配布行為が、わいせつ物陳列罪で有罪とされた二例目の事件。被告人側は刑法175条の成立を争わず。
モンキータワー事件 札幌地判平成8(1996)年6月27日(園田先生サイト) パソコン通信を使ったサイバーポルノ画像データ配布行為が、わいせつ物陳列罪で起訴された事件。刑法175条の構成要件該当性が初めて争われたが、有罪。
ニフティサーブ電子掲示板詐欺事件




 
京都地判平成9 (1997)年5月9日判時1613 号156頁
判決文

(夏井先生サイト)
ニフティサーブ会員に成りすました被告人が、電子掲示板や電子メールで虚偽の販売情報を流して被害者から振込入金を受け金銭を詐取した事案。裁判所は、詐欺罪の成立を認めるとともに、入金受け入れのために前記会員名義の普通預金口座開設申込書を偽造した上、これを銀行に送付した行為を、私文書偽造及び同行使罪にあたるとした。なお、被告人が、成りすましの発覚を防ぐためニフティに対し前記会員名で虚偽の住所変更情報を送信して当該虚偽情報をニフティの顧客データベースファイルに記憶させ行為につき、裁判所は、電磁的記録不正作出罪に該当すると判示。
他人名義の銀行預金口座開設申込書を偽造して同行に郵送した行為が私文書偽造・同行使罪に、パソコン通信サービスの電子掲示板にパソコン部品を売り渡す意思があるかのように装って前記他人名義で虚偽情報を書き込み、これを閲覧して問い合せした者に対し、売買代金あるいは手付け金を支払えば、注文にかかる前記部品を郵送する旨の虚偽の内容の電子メールを送信して前記預金口座に金員を振込入金させた行為が詐欺罪に、前記詐欺事犯の発覚を免れるため、パソコンで電話回線を通じて前記パソコン通信会社に、会員である前記他人の住所及び電話番号が変更された旨の虚偽の情報を送信し、情を知らない同社係員をして、その旨の情報を同社に設置されたコンピュータに記憶させた行為が私電磁的記録不正作出罪に該当するとされた事例。
ニフティサーブ現代思想フォーラム事件第一審 東京地判平成9(1997)年5月26日判時1610号22頁
(判決文)
(町村先生サイト) 
パソコン通信の電子会議室への書き込みにつき他の会員に対する名誉毀損の成立を認めた判例。書き込みを放置したとして会議室のシスオペの責任も一部認められ、シスオペを雇っていたパソコン通信運営会社の責任も、使用者責任に基づき一部認容。控訴。
アルファネット事件第一審 京都地判平成9(1997)年9月24日判時1638号160頁(園田先生サイト) パソコン通信を使ったサイバーポルノ画像データ配布行為が、わいせつ物陳列罪に該当するか争われたが、裁判所はサーバのハードディスクを「わいせつ物」であるとし、本件を「陳列」にあたるとして有罪とした。控訴。
PC-VANチャット・ログ事件第一審
 
東京地判平成9(1997)年12月22日判時1637号66頁(判決文)
 
会員がパソコン通信において他の会員による会員番号不正使用の疑惑を指摘した発言を掲示した行為が従前の経緯に照らし他の会員の社会的評価を低下させたものとはいえないとして、名誉毀損の成立を否定し、プライバシー侵害、著作権侵害の主張も退けた。控訴。
ケイネット東京事件第一審
 
東京地判平成10(1998)年12月21日判時1684号79頁(夏井先生サイト) パソコン通信の会員が電子掲示板上に同通信サービス運営業者を批判する書き込み等を行ったので同業者が入会契約を解除した事案で、同サービスの提供を継続しがたい重大な事情の存在は認められず解除は無効とした。控訴。
ケイネット横浜事件第一審 横浜地判平成10(1998)年12月25日判時1684号79頁(夏井先生サイト) パソコン通信の会員が電子掲示板上に同通信サービス運営業者を批判する書き込み等を行ったので同業者が入会契約を解除した事案で、信頼関係が破壊されており契約解除は有効とした。控訴。
掲示板プライバシー侵害事件 神戸地判平成11(1999)年6月23日判時1700号99頁(町村先生サイト) パソコン通信の掲示板に他の会員の連絡先等を無断で書き込んだ行為がプライバシー権を侵害するとした。控訴。
眼科医である原告の個人情報を、被告がパソコン通信の掲示板に掲載したので、原告が無言電話等の嫌がらせを受けて診療を妨害される等した事案で、故意に原告のプライバシーを侵害し不法行為を構成するとして、被告に損害賠償責任が認められた事例。
アルファネット事件控訴審 大阪高判平成11(1999)年8月26日判時1692号148頁(園田先生サイト) 控訴審で弁護人側は、原判決の解釈は刑法175条の「許されざる類推解釈」であり、罪刑法定主義を定めた憲法31条、39条に違反する等の点を主張したが、裁判所はこれを認めず控訴棄却。上告。
フロンティア事件

 

浦和地川越支判平成11(1999)年9月8日(園田先生サイト) パソコン通信「フロンティア」を開設し、画像処理ソフト「FLMASK」で性器部分にマスク処理した画像データ等を送信した行為につき、受信画像を画像処理ソフト等を使用すればわいせつ画像に容易に復元閲覧可能な状況を設定したとして、わいせつ物陳列罪の成立を認めた。
ケイネット横浜事件控訴審 東京高判平成11(1999)年9月8日判時1748号125頁 会員側からの控訴を棄却。

 
ケイネット東京事件控訴審

 
東京高判平成12(2000)年1月19日 判時1748号125頁

 
パソコン通信の会員が電子掲示板上に同通信サービス運営事業者を批判する書き込み等を行ったので同社が入会契約を解除した事案で、同サービスの提供を継続しがたい重大な事情の存在は認められず解除は無効であるとして、同会員の請求を一部認容した原判決を不服として、同事業者が控訴した事案で、ネットの運営は会員の意見や批判に耳を傾ける姿勢が求められ、同事業者に不十分な点もあったが、同会員の意見表明は、一つ一つは会員規約の重大な違反とはならないが、全体としてみればネットの運営を現実に妨げる恐れがあり、同事業者との信頼関係を著しく損なったとして、同会員の一部勝訴部分を取り消し、解除を適法とした事例。
わいせつ図画販売、わいせつ図画販買目的所持、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等事件 京都地判平成12(2000)年7月17日判タ1064号249頁 パソコン通信ネットワーク「@(アット)ニフティ」の会員が、同ネットワークの電子掲示板にわいせつ図画及び児童ポルノである写真集等の販売広告を掲示した上、同広告を閲覧して購入を申し込んできたAほか一名に対し、男女の性器や性交場面を露骨に撮影した画像を収録したわいせつ図画であるビデオテープ一巻及び児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識できる方法により描写した児童ポルノであるビデオテープ一巻並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである写真集一冊を郵送し同所で同人らに受領させ、販売する等した事例。
アルファネット事件最高裁決定 最三小決平成13(2001)年7月16日判時1762号150頁
(決定文)
(毎日新聞サイト)
上告棄却。職権判断で、わいせつな画像データを記憶、蔵置させたいわゆるパソコンネットのホストコンピュータのハードディスクは、刑法175条が定めるわいせつ物に当たり、同条にいうわいせつ物を「公然と陳列した」とは、その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい、わいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にすることを要せず、いわゆるパソコンネットのホストコンピュータのハードディスクにわいせつな画像データを記憶、蔵置させ、不特定多数の会員が自己のパソコンを使用して、この画像データをダウンロードした上、画像表示ソフトを用いて画像を再生閲覧することが可能な状態に置くことは、同条にいうわいせつ物を「公然と陳列した」ことに当たるとした事例。
ニフティ「本と雑誌のフォーラム」事件 東京地判平成13(2001)年8月27日 判時1778号90頁
(判決文)

(毎日新聞記事) 
パソコン通信サービス上で、会員である原告が、他会員の発言により名誉毀損及び侮辱の被害を受け、同会員がハンドル名に原告の本名を使用したことでプライバシー侵害及び嫌がらせの被害を受けたところ、ニフティサーブを管理運営している被告が、前記各不法行為に対し適切な措置をとらなかったために精神的被害を受けたなどと主張して被告に対し損害賠償請求し、また、被告が合理的な理由がないのに同会員の契約者情報を隠匿、隠蔽し、原告の名誉権回復を妨害しているとして、人格権による差止請求権及び不法行為に基づく妨害排除請求権を根拠に同会員の氏名、住所の情報開示を求めたが、これを棄却した事例。
ニフティサーブ現代思想フォーラム事件控訴審 東京高判平成13(2001)年9月5日 判タ1088号94頁
(判決文)
(毎日新聞記事) 
パソコン通信の電子会議室への書き込みにつき他の会員に対する名誉毀損及び侮辱の成立を認めた判例。書き込みを放置したとして訴えられていた会議室のシスオペ、シスオペを雇っていたパソコン通信運営会社の責任は、否定された。
 
 
 

4.インターネット関連判例

 
 前述したとおり、1990年代後半を迎えて情報ネットワークの主流がパソコン通信からインターネットに移行するに伴い、情報ネットワーク関連の法律紛争も、主要舞台をインターネットへと移していった。具体的には下表を参照されたい。

 初期のインターネット関連判例の主流を占めたのは、パソコン通信の場合と同様、わいせつ物陳列罪に関する一連のサイバーポルノ事件であった。

  この類型で最初に有罪とされたケースが東京地判平成8年4月22日(ベッコアメ事件)であった。この類型の事件においては、パソコン通信の場合と同様に初期において被告人側が争わなかった結果、刑法175条違反が単純に認められていった。しかしその後、この類型の本質は無体物たるデータの頒布行為であって、有体物たるべき「わいせつ物」の「陳列」にはあたらないとして、構成要件該当性が争われる判例が次第に増加する。

 この点、「わいせつ物」は有体物であることを要せず、わいせつ画像データが「わいせつ物」にあたるとして有罪とする岡山地判平成9年12月15日(岡山FLMASK事件)も現れた。 しかし、あまちゅあ・ふぉと・ぎゃらりー事件判決(東京地判平成11年6月22日判例集未登載)をはじめとする判例の主流は、コンピュータまたはハードディスクが「わいせつ物」に該当するという法律構成によって有罪としている(この点でもパソコン通信判例の場合と同様)。

 サイバーポルノ事件判例の中にも、次第にインターネットの特徴を反映した事件が登場しはじめる。

 まず、インターネットのグローバルな性格を反映して、わいせつ画像データを日本国内に設置されたコンピュータから米国内のウェブサーバに送信し公開した事件が登場した。わいせつ物陳列罪は国外犯を処罰していないので処罰対象となるか注目を集めたが、山形海外送信事件(山形地判平成10年3月20日)では被告人側が争うことなく有罪となり、大阪海外送信事件(大阪地判平成11年2月23日)および前記あまちゅあ・ふぉと・ぎゃらりー事件判決では争点となったが、実行行為の一部たる前記送信行為が日本から行われている等の理由で有罪とされた。インターネット特有のハイパーリンク行為についても、わいせつサイトへのリンク行為を、わいせつ物陳列罪の幇助犯に該当するとした大阪地判平成12年3月30日FLMASKリンク事件も登場している。

 こうしたサイバーポルノ事件との関連で、捜査手続の違法性が問われた事件も発生している。すなわち、東京地判平成10年2月27日(福岡県違法捜索事件)では、プロバイダの会員多数のデータ(ホームページ開設者に係るもの)を捜索差押許可状により差し押さえた処分が、準抗告審で、被疑事実との関連性を認めがたく差押の必要性が認められないとして取り消されている。

 パソコン通信時代にはニフティ現代思想フォーラム事件のような名誉毀損民事事件で情報発信者本人とネット管理者の責任が争われる判例が存在していたが、インターネットにおいても同種の事件が発生している。

 その具体例が都立大学事件の東京地判平成11年9月24日である。本判例は、都立大学で対立中のグループの一方が他方を誹謗するウェブページを都立大のホストを使って掲載し、これを大学設置者の東京都が放置したとして、掲載者と東京都に対し損害賠償等を求めた事案で、掲載者の責任は認めたが、東京都の責任は否定した。

 ネットの普及によって、個人が誰でも簡単に不特定多数人を相手に情報発信できるようになったこと自体は、たしかに素晴らしいことである。その半面、情報発信に熟達し、チェックする部門も完備しているはずのマスメディアですら、法律紛争に巻き込まれることがある。まして情報発信に習熟していない個人の場合、書き込んだ内容次第では紛争となる可能性が高いという点に注意すべきであろう。ネットの匿名性が名誉毀損などに悪用されているケースが存在している一方、必ずしも書き込んだ本人を特定することができないので、情報発信者本人の代わりにネット管理者が被害者から責任を問われ、板挟みになって『側杖』をくうケースが増えている状況である。そのような場合のネット管理者の責任をめぐって、都立大学事件判決以外にも、パソコン通信に関して、前述のニフティサーブ現代思想フォーラム事件、ニフティ「本と雑誌のフォーラム」事件判例を含め、複数の判例が言い渡されている。しかし、各判例が示している基準は必ずしも同一ではなく、明確でもない。したがってプロバイダなどの現場では、責任を負わされることを避けるために、どのような場合に削除すべきなのかという点をめぐって、今後混乱が発生するおそれがあり、その意味で管理者の負担は重い。かといって管理者が自己の責任を免れる目的で安易に削除に走る傾向になれば、あまりにもネットが窮屈な世界になってしまう。現在、こうした事態を踏まえて、ネット管理者の責任について限定する方向で立法化に向けた検討作業が行われており、そこでは、発信者についての通信の秘密やプライバシーの保護に留意しつつ、被害者救済を適正に図るための、明確で適正なルールを構築することが急務となる。しかし、その具体的内容となると必ずしも簡単ではない。たとえば被害者からネット管理者に苦情が寄せられ、苦情に応じて発信者自身が削除しないという理由だけで、プロバイダなどのネット管理者が安易に被害者に対して発信者の住所や氏名を開示することが許されるとなれば、今度はクレーマーまでもが簡単に情報発信者の個人情報を取得することができることになってしまい、場合によっては報復目的での暴露合戦や、ストーカーまがいの事件を招いてしまう結果、紛争が無用の方向へとエスカレートすることにもなりかねない。立法担当者に課せられた使命は重大である。

  インターネットが日本でも急速に普及するのに伴い、サイバーポルノ事件以外にも、パソコン通信と異なったインターネット独自の特色を有する事件が登場している。例えば大阪地判平成9年10月3日(朝日放送事件)では、テレビ局のウェブ内に侵入して掲載中の画像を書き換えた事案で、電子計算機損壊等業務妨害罪等の成立を認めた。こうした類型の事件は、その後施行された不正アクセス禁止法の処罰対象となり、判例集には登載されていないものの、複数の有罪判決が出ている。他に、プロバイダが電子ダイレクトメール送信差止めを求めた仮処分申立を認容した浦和地決平成11年3月9日(ニフティ・スパムメール送信差止事件)もある。

 近時はインターネット上の法律紛争は知的財産権事件を中心に多様化している。
 まず特許の領域では、インターネットの時限利用課金システム事件に関する東京地決平成12年12月12日がある。債務者が実施するシステムの構成および内容が債権者主張のとおりと認定できないことを理由に、いわゆるビジネスモデル特許に基づく差止仮処分の申し立てを却下した決定である。
 ユニヴァーサルハウス事件の東京地判平成11年8月27日は、原告の登録商標と類似する標章等を被告が使用した行為が商標権侵害および不正競争防止法違反にあたるとしてインターネットのウェブページの広告等への使用差止を請求した事案で、著名であるとも山梨県内で広く知られているとも認められないとして前者を否定し、被告役務は本件商標権の指定役務に類似の役務でないとして後者も否定した。
 不正競争防止法に基づくドメイン名使用差止請求事件も発生している。東京地判平成11年11月17日(キューピー著作権事件)では請求棄却となったが、ジャックス事件に関する富山地判平成12年12月6日(第一審)、平成13(2001)年9月10日(控訴審)、および東京地判平成13年4月24日(ジェイフォン事件)では認容されている。
 ドメイン名紛争については裁判外紛争処理機関による紛争処理制度がスタートしたので、前記権紛争処理機関へと持ちこまれるケースが増えている。しかもグローバルな性格を反映して、世界知的所有権機関など国際的な紛争処理機関に申し立てられる事件も増加の一途をたどっている。

 

 
事件名 判 例 概 要
ベッコアメ事件
 
東京地判平成8(1996)年4月22日判タ929号266頁(園田先生サイト) インターネット上のウェブにポルノ画像を掲載した行為を、初めてわいせつ物陳列罪で有罪とした判例。被告人側が争わず。
 
J-BOX事件

 
大阪地判平成9(1997)年2月17日(園田先生サイト)
 
画像処理ソフト「FLMASK」等により局部等をマスク処理で隠した画像を、「FLMASK」の入手先・使用方法とともに掲載した行為が刑法175条違反となるか、初めて問題になった事件。被告人側が争わなかったこともあり、わいせつ物陳列罪で有罪とした。
朝日放送事件
 
大阪地判平成9(1997)年10月3日判タ980号285頁(夏井先生サイト) インターネットを介して、大阪のテレビ局「朝日放送」のウェブ内に侵入し、天気予報画像を消去してわいせつ画像に書き換えた事案で、電子計算機損壊等業務妨害罪及びわいせつ物陳列罪の成立を認めた。
岡山FLMASK事件 岡山地判平成9(1997)年12月15日判時1641号158頁(園田先生サイト) マスク処理をして局部等をモザイク処理で隠した画像のアダルトサイトへの掲載行為が問題となった事案で、わいせつ画像データがわいせつ物にあたるとして有罪。
福岡県違法捜索事件
 
東京地 決平成10(1998)年2月27日判時1637号152頁(園田先生サイト) 捜索差押許可状に基づきインターネット接続会社の管理する顧客管理データを差し押さえた司法警察員の処分が、準抗告審において、利用者のプライバシー保護が強く要請される電気通信事業法上の特別第二種電気通信事業者に対する捜索差押の適法性を判断するには利用者のプライバシー保護を十分に考慮する必要があるとした上、被疑者以外の会員に関するデータには被疑事実との関連性がなく差押えの必要性が認められないとして取り消された事例。
山形海外送信事件

山形地判平成10(1998)年3月20日(園田先生サイト) わいせつ画像データを日本国内に設置されたコンピュータから米国内のウェブサーバに送信し公開した事件。わいせつ物陳列罪は国外犯を処罰対象にしていないので、処罰対象となるか注目を集めた。弁護人側が争わなかったため、争点とされることなく、わいせつ物陳列罪で有罪が言い渡され確定。
大阪海外送信事件
 
大阪地判平成11(1999)年2月23日(園田先生サイト) 米国のサーバにアダルトサイトを開設し、日本国内から同サイトにわいせつ画像データを送信した行為が問題となり、弁護人が争ったが、わいせつ物陳列罪で有罪。確定。
ニフティ・スパムメール送信差止事件 浦和地決平成11(1999)年3月9日判タ1023号272頁(夏井先生サイト) ニフティサーブ会員に対する他のプロバイダ会員からの電子ダイレクトメール送信差止を求めた仮処分申立を認容。

 
クロロホルム強姦未遂事件  東京地判平成11(1999)年3月16日判時1674号160頁
(判決文)
インターネット上で入手したクロロホルム等を用いた強姦未遂等の事案で実刑判決を言い渡した。 
あまちゅあ・ふぉと・ぎゃらりー事件 大阪地判平成11(1999)年3月19日 判タ1034号283頁
(園田先生サイト)

 
日本国内のアダルトサイトにマスク処理をして局部などを隠した画像を掲載した点と、米国に設置されたサーバに会員向けアダルトサイトを開設し、日本国内からそのアダルトサイトにわいせつな画像データを送信していた点が問題となり、弁護人が争ったが、裁判所は有罪とした。
インターネットを利用し、男女の性器等を露骨に撮影したわいせつ画像の性器部分等に画像処理ソフトでマスク処理したわいせつ画像データを記憶・蔵置させた事案で、画像の一部に施されたマスク処理が容易に除去でき、わいせつ性が顕現するものであれば、わいせつ性は否定されず、わいせつ画像データを記憶、蔵置させたサーバコンピュータのディスクアレイが刑法175条の「わいせつ図画」、同データ等をそのダウンロードを可能とする被告人開設のホームページのあるプロバイダのサーバコンピュータに送信してディスクアレイに記憶、蔵置させた行為が「公然と陳列した」ものであり、日本国内から海外プロバイダのサーバコンピュータにわいせつ画像データを送信し、そのディスクアレイの所在場所が日本国外でも、それ自体として同条が保護法益とする我が国の健全な性秩序ないし性風俗等を侵害する現実的、具体的危険性を有する行為であれば、わいせつ図画公然陳列罪の実行行為の重要部分に他ならず、被告人が同行為を日本国内において行ったものである以上、同条を適用しうる等とした事例。
東京海外送信事件 東京地判平成11(1999)年3月29日(園田先生サイト)
 
米国に設置されたサーバにウェブを開設し、日本国内からマスク画像付きわいせつ画像データを送信し、日本国内で会員を募り、ダイヤルQ2回線を使用していた事案で、インターネットはテレビ放送と同じであるとして、わいせつ画像の「陳列」であるとされた。
クロロホルム販売事件 東京地判平成11(1999)年4月22日岡村編343頁
(判決要旨)
 
京大院生が、研究室のクロロホルムなど毒劇物や向精神薬を持ち出し、ウェブページ「裏道」(米国サンタモニカに本社を置くプロバイダのサーバーを利用)を通じて売り捌いていたとして毒劇物取締法(無許可販売)、麻薬及び向精神薬取締法違反事件で実刑判決を受けた事件。
ユニヴァーサルハウス事件

 
東京地判平成11(1999)年8月27日知的財産権判例検索) 原告の登録商標と類似する標章等を被告が使用した行為が商標権侵害および不正競争防止法違反にあたるとしてインターネットのウェブの広告等への使用差止を請求した事案で、著名であるとも山梨県内で広く知られているとも認められないとして前者を否定し、被告役務は本件商標権の指定役務に類似の役務でないとして後者も否定。
都立大学事件

 
東京地判平成11(1999)年9月24日判時1707号139頁  (判決文) 都立大で対立中のグループの一方が他方を誹謗するウェブページを都立大のホストを使って掲載したとして、掲載者と大学設置者の東京都に対し名誉毀損による損害賠償等を求めた事案で、掲載者の責任は認めたが都の責任を否定。
原告らが、被告東京都の設置する東京都立大学の学生である相被告が同大学の管理下にあるコンピューターシステム内に開設したホームページに掲載した文書が原告らの名誉を毀損すると主張して、被告らに損害賠償ないし名誉回復措置を求めた事案で、相被告に対する損害賞請求は一部認容したが、被告東京都に対する請求を棄却した事例。
ピアノ調律師事件


 
千葉地判平成11(1999)年9月28日岡村編343頁


 
ピアノ調律師が、ウェブ「裏道」を仕入先として毒劇物をネットで再販売し、さらにNTT職員に現金を渡して非公開の電話加入者情報を入手しネットで販売していた事案で、NTT職員にNTT法違反(収賄罪)が、ピアノ調律師に対し同法違反(贈賄罪)、毒劇物取締法違反並びに麻薬及び向精神薬取締法違反で有罪を言い渡した。
キューピー著作権事件第一審
 
東京地判平成11(1999)年11月17日判時1704号134頁
知的財産権判例検索) 
原告は、商品等表示「キューピー」(kewpie)が自己の著名な商品等表示にあたるとして、被告のドメイン名「kewpie.co.jp」の使用差止等を請求したが、「著名ないし周知であることを認めるに足りる証拠はない」として請求を退けた。
アーゼオン事件第一審
 
東京地判平成11(1999)年12月28日知的財産権判例検索) 不正競争防止法2条1項1号に該当することを理由に、被告に対し、会社案内及びホームページその他被告の宣伝、広告から、その態様のいかんを問わず、商号、通称、愛称その他被告の営業を表示する「アーゼオン」の文字を除去せよ等と命じた。
盗品ネガ無断掲載事件 東京地判平成12(2000)年1月31日判タ1046号187頁 被用者が会社の同僚の事務用机の引き出しからネガフィルムを盗み出し、これを焼き付けて自分のホームページに掲載した行為につき、会社の事業の執行につきなされたものとはいえないとして、会社の使用者責任を否定した。
セブンデータ・システムズ事件 大阪地判平成12(2000)年3月23日 サイバー法判例解説8頁知的財産権判例検索) 著作権及び著作者人格権に基づき、図表をパソコン通信やインターネットを通じて送信可能化してはならないとする差止請求等が、棄却された事例。
株価変化を表す原告図表「増田足」につき、原告が被告に使用料支払を対価に複製を許諾し、原告図表をソフトウェアに組み込んだシステムの改訂版を被告が販売して、その売却代金を原告に支払うことを合意したが、被告が支払わないとして一部支払いを求めるとともに、前記債務不履行により前記許諾契約は解除されたので、原告図表を複製・翻案した被告図表の頒布等は原告の著作権・著作者人格権を侵害するとして、被告図表をパソコン通信やインターネットを通じて送信可能化することの差止めを求めた事案で、原告図表は著作物に該当しないとして、請求を棄却した事例。
FLMASKリンク事件

 
大阪地判平成12(2000)年3月30日 サイバー法判例解説70頁(園田先生サイト)
(毎日新聞記事)
 
J-BOX事件及びあまちゅあ・ふぉと・ぎゃらりー事件のサイト開設者を正犯とする前記各事件との関連で、FLMASKの作者が幇助犯として起訴された事件。本件では、FLMASKがダウンロード可能な自己のWebページからFLMASKでマスク処理していた前記正犯のWebページへとリンクを張っていた点が、わいせつ物陳列罪の幇助行為にあたるとして、有罪とした判決。
ペット美容師筋肉弛緩剤販売事件 名古屋地豊橋支判平成12(2000)年6月19日岡村編343頁 (毎日新聞記事) インターネットで自殺願望の女性に自殺方法をアドバイスし筋肉弛緩剤を郵送した尼崎市のペット美容師の行為につき、自殺幇助罪で有罪とした。
 
岡山レディースナイト事件

 
岡山地判平成12(2000)年6月30日 サイバー法判例解説72頁(園田先生サイト)
 
被告人らが、インターネット上にウェブページ「レディースナイト」を開設し、リアルタイムでわいせつなショーを不特定多数のインターネット利用者に有料で閲覧させた事案で、わいせつ物陳列罪(刑法175条)を否定し、公然わいせつ罪(刑法174条)の成立を認めた。
横浜わいせつ画像メール添付事件1 横浜地川崎支判平成12(2000)年7月6日 サイバー法判例解説74頁(園田先生サイト) 電子メールにわいせつ画像データを添付ファイルとして添付して、わいせつ画像を「販売」した事案で、わいせつ物陳列罪の成立を認めた。
被告人が、インターネットにおける電子メール・システムを利用してわいせつ画像を販売しようと企て、自己のホームページに無修正のわいせつ画像を電子メールで販売する旨の告知をし、被告人が開設した指定銀行口座に代金を振り込んだ7名に対し、わいせつ画像データを電子メールの添付ファイルとして送信した行為が、わいせつ物陳列罪にあたるとされた事例。
不正アクセス事件
 
千葉地判平成12(2000)年7月12日
(毎日新聞記事)
他人のID及びパスワードを冒用してインターネット接続プロバイダのサービスを利用した行為につき、不正アクセス禁止法違反等の成立を認めた。不正アクセス禁止法で初の有罪となった事件。
アーゼオン事件控訴審 東京高判平成12(2000)年 9月28日知的財産権判例検索) 被告からの控訴を棄却。

 
横浜わいせつ画像メール添付事件2 横浜地川崎支判平成12(2000)年11月24日(園田先生サイト) 横浜わいせつ画像メール添付事件1に同じ。

 
特許権再実施権許諾差止等請求事件  東京地判平成12(2000)年11月28日知的財産権判例検索) 原告が被告らに対し、同社が、インターネットのホームページ又は新聞紙上に、特許権について、自社が開発したものであるとの表示及び自社が現在もなお本件特許権の専用実施権者であるとの表示をしていることを理由として、右表示の差止め及び損害賠償を求めた事案。 
ジャックス事件第一審


 
富山地判平成12(2000)年12月6日判タ1047号297頁知的財産権判例検索)

(判決文)

「http://www.jaccs.co.jp」というドメイン名を使用し開設するホームページで「JACCS」の表示を用いて営業活動をする被告に対し、「JACCS」の営業表示を有する原告が、被告によるドメイン名の使用及びホームページ上での「JACCS」の表示の使用は、不正競争防止法2条1項2号に当たるとして、当該ドメイン名の使用差止め及びホームページ上の営業活動での前記表示の使用差止めを認容。
時限利用課金システム事件
 
東京地決平成12(2000)年12月12日判時1734号110頁知的財産権判例検索)
決定文    
インターネット接続サービス事業の用に供するシステムを使用する債務者の行為は、債権者の有する特許権を侵害するとして、同システムの使用の差止め等を求めた仮処分事件において、債務者が実施している債務者システムの構成及び内容は債権者の主張するものであると認められず、認定した債務者システムの構成及び内容(インターネットの利用者が、インターネット上でデジタル情報として提供される画像、音声又はゲーム等を購入し、あるいは検索等のサービスを利用する際に(インターネット等を通じて提供される前記マルチメディア情報を、プリペイド方式のBitCashカードを利用してその代金決済を行うこと)を前提に、本件発明の構成要件と債務者システムの構成を対比してみても、債務者システムは、本件発明の構成要件を充足しないとして、申立てを却下した事例。
わいせつCD-ROM販売事件  横浜地判平成13(2001)年3月14日 (毎日新聞記事) わいせつ画像を収めたCD-ROMをインターネットで販売したとして、わいせつ図画販売などの罪の成立を認めた事件。
ジェイフォン事件第一審

 
東京地判平成13(2001)年4月24日判タ1755号43頁 (判決文) 「J-PHONE」が原告の「著名な商品等表示」(不正競争防止法2条1項2号)に該当し、これと被告のドメイン名「j-phone.co.jp」とが類似するとして、被告に対し前記ドメイン名等の使用の差止め等を求める請求及び営業上の信用毀損を理由とする損害賠償請求を認容した。なお先使用の抗弁(同法11条1項4号)の主張も退けた。
キューピー著作権事件控訴審  東京高判平成13(2001)年5月30日
判決文
一部認容。一部控訴棄却。
高校総体ホームページCD−ROM化事件 東京地判平成13(2001)年5月31日サイバー法判例解説12頁 判決文 京都市から平成9年度高校総体のインターネットホームページ制作の発注を受けた被告が、これをさらに原告に発注して完成させた後、そのCD-ROM化を高校総体京都市実行委員会から被告が委託され、これを被告から下請けした原告が完成させ引き渡したが、被告がそれを一部不採用として、残部のみを利用してCD-ROMを完成したので、被告により複製権・同一性保持権・氏名表示権が侵害されたと主張して損害賠償等を請求した事案で、著作物性が認められる部分について、原被告間で同ホームページをCD-ROMに複製し、複製したCD-ROMは京都市が著作権を有することの合意があった等として、原告の請求を棄却した事例。
サイボウズ差止仮処分事件  東京地決平成13(2001)年6月13日判時1761号131頁 (記者発表 1) (記者発表 2) グループウエアに対する著作権侵害を理由とする仮処分申請が認容された事例。
日本生命対2ちゃんねる差止仮処分事件  東京地決平成13(2001)年8月28日 (毎日新聞記事) 電子掲示板「2ちゃんねる」に誹謗・中傷する書き込みをされたとして日本生命が求めた仮処分申請に基づき、「2ちゃんねる」の管理者に対し書き込みの削除を求める決定を出した。
通信傍受法違憲訴訟事件 東京地判平成13(2001)年8月31日(毎日新聞記事) 通信の秘密を保障した憲法に通信傍受法は違反し、平穏な生活を侵害されたとフリージャーナリストが主張して、国に損害賠償と同法の無効確認を求めた訴訟で、「通信の傍受は重大犯罪に限り、令状に基づいて行われるもので違憲とは言えない」として、請求を棄却。
ジャックス事件控訴審 名古屋高金沢支判平成13(2001)年9月10日サイバー法判例解説14頁 (判決文 ) 
(朝日新聞記事)
控訴棄却。
「JACCS」という表示を用いて営業活動を行っている被控訴人が、インターネット上で「jaccs.co.jp」というドメイン名を使用し、開設するウェブページにおいて「JACCS」の表示を用いて営業活動をしていた控訴人に対し、控訴人による同ドメイン名使用及びウェブページ上での「JACCS」の表示使用は不正競争防止法2条1項1号、2号所定の不正競争行為に該当するとして、同ドメイン名の使用の差止め及びウェブページ上の営業活動における前記表示使用差止めを求めた事案で、同項2号の不正競争に該当するとして控訴人の請求を全部認容した原判決に対する控訴を棄却した事例。なお附帯控訴が認めて、主文の差止め対象が原審の「http://www.jaccs.co.jp」から「jaccs.co.jp」へと変更された。
レンタルサーバデータ消滅事件 東京地判平成13(2001)年9月28日サイバー法判例解説16頁 (判決文 )  被告が自己のサーバーに保管していた原告のホームページのファイルを消滅させたことに関し、原被告間のワールドワイドウェブレンタルサーバーサービス契約にかかる債務不履行に基づく被告の損害賠償責任を認めた上、ファイルのバックアップ等の措置をとっていなかったこと等の諸般の事情を斟酌し、過失相殺として損害の2分の1を減額した事例。
東久留米市事件 東京地八王子支判平成13(2001)年10月11日サイバー法判例解説18頁
(判決文)
インターネットのホームページ中で事実に反する記載をして、これをプリントアウトしたビラを街頭で市民に多数配布したとして、信用毀損による不法行為に基づく謝罪広告等を請求した事案で、請求を棄却した判決。
地方公共団体である原告が市制施行30周年記念事業の一環として設置することにした「平和都市宣言モニュメント」に盗作の疑いがあると指摘する記事を、市議会議員の被告が、自ら作成するインターネットのホームページに掲載し、これをプリントアウトしたものに広告写真の切り抜きや手書きの文言等を加えて作成したビラを街頭で市民に多数配布したとして、社会的信用毀損による不法行為に基づく謝罪広告等を原告が請求した事案で、盗作は真実と認められないが、被告の表現行為による原告の行政作用への影響はそれほど大きくなく、原告の行政作用の支障を回復させるという利益が、被告による表現の自由の利益を上回っているとまでいえないとして、請求を棄却した事例。
ストーカー規制法違反事件 福島地判平成13(2001)年10月11日サイバー法判例解説76頁
(判決文)
携帯電話のメール交換などで知り合った女性に対する恋愛感情を充足する目的で、ストーカー行為をした事案に関する有罪判決。
携帯電話のメール交換などで知り合った者に対する恋愛感情を充足する目的で、公衆電話から同女の携帯電話に電話をかけ、同女に対し同女の関係者に危害を加えることを示唆する内容を告げた上、電報を送付するなどして同女に被告人との電話での応対及び面会を要求し、同女を監視して見張り、待ち伏せする等を行ったことを、ストーカー規制法違反とした事例。
ジェイフォン事件控訴審 東京高判平成13(2001)年10月25日サイバー法判例解説20頁
(判決文)
控訴棄却。
ドメイン名「j-phone.co.jp」の登録者である控訴人が、インターネット上のウェブサイトを開設して「J-PHONE」等の表示を用いて商品の宣伝等をしたのに対し、ジェイフォン東日本(被控訴人)が、前記行為は不正競争防止法2条1項1号、2号所定の不正競争行為に該当するとして、控訴人に対し同ドメイン名及び控訴人使用の各表示について、使用中止及びウェブサイトからの抹消並びに損害賠償を請求し、原判決が中止及び抹消の各請求を認容して損害賠償の請求を一部認容した事案で、控訴を棄却した事例。
ドコモ迷惑メール差止め仮処分事件 横浜地決平成13(2001)年10月29日判時1765号18頁 (決定文) 差止仮処分決定。
NTTドコモのパケット通信サービスの不特定多数の契約者に対して大量かつ継続的に、いわゆる迷惑メールを送信した者に対する仮処分の事案で、送信の方法、時期及び回数がNTTドコモの電気通信設備等に発生した具体的な機能障害等の大きな原因となっており、送信者の上記行為がNTTドコモの同設備に対する所有権を侵害しているが、送信者はNTTドコモの警告後も依然として従前と同様の方法により電子メールの発信を大量かつ継続的に行ってきた等の事情に照らすと、少なくとも、送信者に対し、この決定送達の日から1年間、宛先となる電子メールアドレスの8桁の数字部分にランダムな数字を当てはめる等の方法により、同サービスを通じて同サービスの契約者の存在しない多数の電子メールアドレス宛に、営利目的の電子メールを送信する等して、NTTドコモの所有する同設備の機能の低下もしくは停止をもたらすような行為を禁止したとしても、かかる行為が、本来、送信者に許された正当な営業活動として法的保護の対象とされているとはいえないとした事案。
JAMJAM事件 名古屋地判平成13(2001)年11月9日サイバー法判例解説24頁判決文 広告及び求人情報を掲載していた被告のホームページにおいて商標権を侵害したことを理由とする損害賠償請求事件において、商標権侵害を 認めたが、損害発生を認めず請求を棄却した判決。
sonybank事件 東京地判平成13(2001)年11月29日
判決文
ドメイン名「sonybank.co.jp」について日本知的財産仲裁センターが下した裁定に関する紛争。
コメットハンター事件(速読本舗事件) 東京地判平成13(2001)年12月3日判時1768号116頁
判決文
インターネット上への書籍要約文無断掲載に関する著作権紛争。
インターネット上にビジネス書を中心とする書籍要約文紹介サイト「速読本舗」を設置し、原告らの著作物である書籍の各要約文を作成した上、同サイトで募った有料の会員に対し電子メールにより原則として有料で送信し、またサンプルとして一部要約文を会員、非会員を問わず同サイトにアクセスした者に対し無料公開したことが、翻案権、複製権、公衆送信権、公衆送信可能化権及び著作者人格権にあたるとした事例(欠席判決)。
電子メール無断モニタリング事件 東京地判平成13(2001)年12月3日労判826号76頁・NBL734号6頁 使用者が従業員の電子メールを無断モニタリングした行為について、プライバシー権侵害の責任を否定した事案
会社の事業部長である被告から、直属のアシスタントである女性がセクシャルハラスメントを受け、社内ネットワークシステムを用いて送受信した女性と夫との私的な電子メールを被告が監視して許可なしに閲読したとして、前記夫婦が不法行為に基づき損害賠償請求した事案で、セクシャルハラスメントの事実は認められず、電子メールの私的使用に一切のプライバシー権がないとはいえないが、保護の範囲は通常の電話装置の場合よりも相当程度低減され、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視の場合に限りプライバシー権侵害となるが、本件では原告らの私的使用の程度が許容限度を超えていること等を理由に、監視行為が前記範囲を逸脱したといえないとして、請求を棄却した事例。
電子メール脅迫事件 福岡地判平成13(2001)年12月19日サイバー法判例解説78頁
判決文
電子メール等を介して交際していた交際相手に対し、メールを送信して脅迫する等の行為をした被告人に対し、脅迫罪等の成立を認めた判決。
交際相手と電話や電子メールを介して交際していた被告人が、交際相手が別の女性と親密な関係にあるとして同女への嫌がらせ等を企て行った、同女夫婦居住のマンション通路への侵入が住居侵入罪、玄関ドア鍵穴への接着剤注入等が器物損壊罪、同女の名誉を毀損する紙片の撒布が名誉毀損罪、同女の夫の勤務会社への無言電話が業務妨害罪、殺してやるなどを内容とするメールの送信が脅迫罪に該当するとした事例。
オルタカルチャー日本版事件 東京地判平成13(2001)年12月25日サイバー法判例解説30頁
判決文
書籍「オルタカルチャー日本版」の中の記事による著書「聖母エヴァンゲリオン」の執筆者に対する名誉毀損につき、記事執筆者、書籍編集発行会社及び書籍発売会社に対し損害賠償責任を認めた上、本件ではインターネットによる言論が相当程度まで影響していることは明らかであること等を理由に、記事執筆者及び書籍編集発行会社に対しインターネット上の掲示板において1か月間の謝罪文掲載を命じるとともに、インターネットによる謝罪広告でほぼ名誉回復の目的を達しうるなどとして、主要全国紙上での謝罪広告は否定した事例。
WinMX事件 京都簡略式命令平成14(2002)年3月22日 (毎日新聞記事) ファイル交換ソフト「WinMX」を起動し、自分のパソコンから商業ソフトをインターネット経由で自由にダウンロードできるよう設定したとして、著作権法違反(公衆送信権侵害)で罰金40万円の略式命令。
偽警察手帳ネットオークション出品
事件
東京地判平成14(2002)年2月8日 判例時報1821号160頁
 
被告人が、真正な警察手帳と色や大きさ、形状等がほぼ同一の、表紙が無地の手帳四冊にそれぞれ金色のインクを用いて真正な警察手帳に表示されているものと色や大きさ、形状、位置等が類似する日章の記号及び千葉県警察等の文字を表示し、一般人から見て真正なものと誤信するような外観の手帳四冊を作成した上でこれをインターネットオークションに出品した事例。
日経クイック情報電子メール事件 東京地判平成14(2002)年2月26日労判825号50頁 電子メールとプライバシーに関する事案。
被告会社の従業員に宛てた誹謗中傷メールの送信者に関する社内調査によって社内のメールサーバから発見された原告交信の私用メール等を、被告会社管理職等が閲覧したことが、原告のプライバシー侵害に該当すること等を理由とする、被告らに対する損害賠償等の請求が棄却された事例。
バイアグラ錠商標権侵害差止等請求事件 東京地判平成14(2002)年3月26日サイバー法判例解説34頁
判決文
商標権「バイアグラ錠」の独占的通常使用権の設定を受けている原告からの、商標権及び不正競争防止法3条による請求に基づき、被告らに対し、バイアグラ錠と称する錠剤について、ウェブページ、看板、チラシ類その他の広告及び申込書、しおりその他の取引書類に、これを使用することの差止請求等を認容した判決。
宇宙戦艦ヤマト事件 東京地 判平成14(2002)年3月25日 判決文 アニメ作品「宇宙戦艦ヤマト」のプロデューサーである被告が、雑誌や自己のホームページ上で、同アニメ作品の著作者は被告であるとする意見を掲載したことに対し、原告が著作者人格権侵害を理由に、差し止め請求と、新聞上での謝罪広告を求めた事案で、同アニメの著作者は被告であるとして、請求を棄却した判決
「宇宙戦艦ヤマト」の活躍をテーマとした一連のアニメ映画作品について、著名な漫画作家である原告が、プロデューサーである被告に対し、原告が著作者人格権を有するとして、謝罪文掲載及び同作品が被告の著作物であること等の記事を新聞、雑誌、インターネット上等に掲載する等の方法によって流布することの差止めを本訴で請求したことに対し、被告が原告に対し反訴を提起して被告が著作者人格権を有することの確認を求めた事案で、同作品の全体的形成に創作的に寄与したのは原告ではなく被告であるとして、本訴請求を棄却して反訴請求を認容した事例。
ファイルローグ仮処分事件(レコード会社申立) 東京地決平成14(2002)年4月9日 決定文 レコード会社の申立に基づき、P2Pファイル交換システム「ファイルローグ」に関する差止仮処分を認容した仮処分決定。
債務者提供の電子ファイル交換サービス「ファイルローグ」は、市販レコードの複製ファイルが大多数を占めるMP3ファイルを、送信者が送信可能化状態にするためのサービスの性質を有し、同サービスにおいて送信者がMP3ファイルの自動公衆送信及び送信可能化を行うことは債務者の管理下に行われており、債務者も自己の営業上の利益を図って送信者に上記行為をさせていたことから、債務者は債権者(レコード会社)各管理著作物の自動公衆送信及び送信可能化を行っているものと評価でき、債権者の自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害しているとして、MP3形式により複製され、かつ送受信可能状態にされた電子ファイルの存在及び内容等を示す利用者のためのファイル情報のうち、ファイル名及びフォルダ名のいずれかに債権者の求めた各管理著作物たる楽曲の「原題名」及び「アーティスト」の文字の双方が表記されたファイル情報の、利用者への送信差止めを認めた仮処分決定。
ファイルローグ仮処分事件(日本音楽著作権協会申立) 東京地決平成14(2002)年4月11日判時1780号25頁 決定文 日本音楽著作権協会の申立に基づき、P2Pファイル交換システム「ファイルローグ」に関する差止仮処分を認容した仮処分決定。
債務者提供の電子ファイル交換サービス「ファイルローグ」は、市販レコードの複製ファイルが大多数を占めるMP3ファイルを、送信者が送信可能化状態にするためのサービスの性質を有し、同サービスにおいて送信者がMP3ファイルの自動公衆送信及び送信可能化を行うことは債務者の管理下に行われており、債務者も自己の営業上の利益を図って送信者に上記行為をさせていたことから、債務者は債権者(日本音楽著作権協会)の各管理著作物の自動公衆送信及び送信可能化を行っているものと評価でき、債権者の自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害しているとして、MP3形式により複製され、かつ送受信可能状態にされた電子ファイルの存在及び内容等を示す利用者のためのファイル情報のうち、ファイル名及びフォルダ名のいずれかに債権者の求めた各管理著作物たる楽曲の「原題名」及び「アーティスト」の文字の双方が表記されたファイル情報の、利用者への送信差止めを認めた仮処分決定。
ホテル・ジャンキーズ事件 東京地判平成14(2002)年4月15日 判時1792号129頁  判決文 インターネット上の電子掲示板に文章を匿名で書き込んだ原告らが、同文章の一部を複製(転載)して書籍を作成し、これを出版等した被告らに対し、被告らの同行為は前記文章に関する原告らの著作権を侵害するとして行った前記書籍の出版等の差止め請求を認容し、損害賠償請求を一部認容した事例。
児童ポルノ法違反事件 京都地判平成14(2002)年4月24日  判決文 インターネットの掲示板を利用して児童ポルノ写真集の販売広告を掲示して購入客を募り、これを閲覧して児童ポルノ写真集の購入方を申し込んできた者らに、児童ポルノ写真集販売したという、児童ポルノ法違反の有罪判決。
goo.co.jp事件 東京地判平成14(2002)年4月26日  判決文 登録ドメイン名「goo.co.jp」使用権確認請求を棄却した判決。
「Linux」商標登録無効審決取消請求事件 東京 高判平成14(2002)年4月30日
判決文
「リナックス」の文字と「Linux」の文字を二段に横書きした商標の指定商品中『印刷物』についての登録を無効とする特許庁の審決に対する取消請求を棄却した判決。
児童買春法等違反事件 広島地福山支判平成14(2002)年5月29日
判決文
行使の目的をもって、パソコン、カラースキャナー及びカラープリンター等を利用して、五千札8枚を偽造した上、「出会い系サイト」で知り合った15歳の少女相手に児童買春を行い、その対価等として、偽造した五千札8枚を真正な通貨のように装って交付して行使した事件の有罪判決。
iybank.co.jp事件 東京地判平成14(2002)年5月30日サイバー法判例解説40頁  判決文 登録ドメイン名「iybank.co.jp」使用権確認請求を棄却した判決。
イトーヨーカ堂を申立人とする日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルにおいて「ドメイン名『IYBANK.CO.JP』の登録を申立人に移転せよ。」との裁定を受けたことを不服として同申立人に対し本人訴訟を提起した同ドメイン名登録者の請求内容につき、同登録移転請求権不存在確認を求める趣旨と解する余地がないとはいえないが、同裁定の認定判断に誤りはないとして棄却し、その余の請求を確認の利益を欠く不適法なものとして却下した事例。
2ちゃんねる「ペット大好き掲示板」事件 (動物病院事件) 東京地判平成14(2002)年6月26日サイバー法判例解説42頁 判決文
 (毎日新聞記事)
被告の運営するインターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」において、原告らの名誉を毀損する発言が書き込まれたにもかかわらず、被告が発言削除などの義務を怠り、原告らの名誉が毀損されるのを放置し、これにより原告らは精神的損害等を被ったなどとして、それぞれ被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として損害賠償請求するとともに、本件掲示板上の名誉毀損発言の削除を求めた事案で名誉毀損を認め、「2ちゃんねる」の管理者は、名誉毀損に当たるかどうかの判断をし、名誉毀損に当たる発言を削除する義務を負っているなどとして、管理者に計400万円の支払と該当発言の削除を命じた判決。
mp3.co.jp事件 東京地判平成14(2002)年7月15日サイバー法判例解説44頁 判決文  日本知的財産仲裁センターの移転裁定を覆し、ドメイン名保有者側を勝たせた判決。 不正競争防止法2条1項12号の「不正の利益を得る目的で」とは「公序良俗に反する態様で、自己の利益を不当に図る目的がある場合」を指し、単にドメイン名の取得、使用等の過程で些細な違反があった場合等を含まず、「他人に損害を加える目的」とは「他人に対して財産上の損害、信用の失墜等の有形無形の損害を加える目的のある場合」を指し、ウェブサイトで商品の販売や役務の提供をしても、当然にはそのウェブサイトのドメイン名を同項1号、2号の「商品等表示」として使用したといえないが、ウェブサイトにおいてドメイン名の全部又は一部を表示して商品の販売や役務の提供についての情報を掲載しているなどの場合には、ドメイン名を両号の「商品等表示」として使用していると解すべき場合もあり得るとした上、以上の各要件への該当性を欠くことを理由に、ドメイン名「mp3.co.jp」の登録者である原告の、同法に基づき原告に対する同ドメイン名使用差止請求権を有すると主張する被告に対する同請求権不存在確認請求を認容した事例。
三菱ホーム事件事件 東京地判平成14(2002)年7月18日サイバー法判例解説46頁 判決文  「三菱」の名称及び「スリーダイヤ」のマークの営業表示を使用する原告らが、被告による「株式会社三菱ホーム」の商号等インターネット上のウェブサイト等における使用は不正競争防止法2条1項2号所定の不正競争行為に該当すると主張して、同法3条に基づき上記の名称及び標章の使用の差止め並びに損害賠償を求めた事案。請求認容。
オートくん事件 大阪地判平成14(2002)年7月25日  判決文 ソフトウエアを販売する原告が、被告ソフトウエアを製作、譲渡、公衆送信する被告に対し、主位的に、被告ソフトウエアが本件ソフトウエアを複製又は翻案したものであり、被告の製作、譲渡、公衆送信行為が原告の著作権(複製権、翻案権)を侵害するとして、著作権法112条1項に基づきその差止めを求めるとともに、損害賠償を請求し、予備的に、被告の被告ソフトウエアの製作、譲渡、公衆送信行為が不法行為に該当するとして、民法709条に基づきその差止め及び損害賠償を求めた事件で、損害賠償金の支払いを命じた判決。
伯林事件 東京地八王子支判平成14(2002)年8月29日 人気漫画家の伯林が、インターネット上の掲示板への書き込みで名誉毀損されたと訴えた訴訟で、元同級生の男性に慰謝料など550万円の支払いと掲示板への書き込み禁止などを命じた。
2ちゃんねる「不当解雇スレッド」事件 東京地判平成14(2002)年9月2日サイバー法判例解説48頁  判決文 2ちゃんねる「 不当解雇スレッド」への不当解雇に該当する旨の書き込みが原告会社らの名誉を毀損する不法行為に該当するとして、損害賠償請求を認容する一方、身元保証契約に基づく責任に ついて請求を棄却した判決。
サイボウズ差止請求事件本訴 東京地判平成14(2002)年9月5日サイバー法判例解説50頁  判決文 被告の製造・頒布等するソフトウエア「アイ・オフィス」バージョン 2.43 及びバージョン 3.0(アイオフィス・ブイ3 iOfficeV3)(被告ソフト)が、原告の製造・頒布等する「サイボウズoffice2.0」 (原告ソフト)の著作権を侵害し、また、原告ソフトの表示画面が,商品形態として不正競争防止法2条1項1号の周知商品等表示に該当するところ、これに類似するとして、両製品の頒布や使用許諾の差止め及び損害賠償を求める訴えを棄却した事案。
「Juku-Net」事件 東京地判平成14(2002)年9月17日サイバー法判例解説52頁  判決文 インターネットを使った学習塾向けパソコン勉強プログラム利用サービス「Juku-Net」のプログラム作成を、具体的な代金を確定せずに原告が被告から請け負い、製作開始後に仕事量に応じた月単位の人工計算とする旨を合意し、これを完成してサーバコンピュータにアップロードし、インターネットを通じて被告に利用させていた事案で、完成後に原被告間で取り交わされた確認書の内容に基づき、被告に請負代金支払義務を認めた事例。
日経新聞記者ホームページ事件 東京地判平成14(2002)年9月24日労働判例844号87頁
 
新聞記者が私的に開設したホームページの内容を理由とする配転命令を、違法であるとは認められないとした事例。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反,電気通信事業法違反被告事件 高松地丸亀支判平成14(2002)年10月16日「サイバー法判例解説84頁 判決文 不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反、電気通信事業法違反を認めた刑事判決。
フリーメール等のサービス運営会社のサーバに、パソコンから電気通信回線を通じて、メールサービス会員のユーザーID及びパスワードを入力して作動させ、その後も前記ユーザーID及び被告人が無断変更したパスワードを入力してこれを作動させ、アクセス制御機能により制限された利用をし得る状態にさせた行為が不正アクセス禁止法違反、不正アクセス行為をして、認証サーバに保管中の会員宛の電子メールの内容を知得した行為が電気通信事業法違反に該当するとされた事例。
goo.co.jp事件控訴審 東京高判平成14(2002)年10月17日サイバー法判例解説54頁 判決文 登録ドメイン名「goo.co.jp」使用権確認請求を控訴棄却した判決。
「goo」の文字を図案化した商標等を登録する被控訴人が申し立てた日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルにおいて、ドメイン名「goo.co.jp」の被控訴人への移転裁定を受けた同ドメイン名登録者たる控訴人が、同ドメイン名使用権確認請求事件を提起し、これを棄却した原判決を不服としてなされた控訴が棄却された事例。
ワン切り事件 東京地判平成14(2002)年10月18日判タ1124号97頁 録音再生機と電話回線の連動した装置(コミュニケーションサーバ)を設置し、ワン切りコールや迷惑メールにより同サーバの電話番号等を広く宣伝した上、同サーバに電話をかけてきた不特定多数人に対し、同サーバに記憶させた前記わいせつな音声を再生して聴取させた行為につき、わいせつ物陳列罪の成立を認めた事例。
ネコ虐待HP公開事件 福岡地判平成14(2002)年10月21日  判決文 猫を虐待する様子がインターネットで公開された事件で、動物愛護法違反を認めた事例。
ホテル・ジャンキーズ事件控訴審判決 東京高判平成14(2002)年10月29日サイバー法判例解説56頁  判決文 著作権侵害を認めて金員支払請求を一部認容した原判決を、控訴人らが不服として控訴し(出版社は控訴を提起しなかったため原判決が確定)、被控訴人らが認容額を不服として附帯控訴をした事案で、被控訴人らの各記述部分を、転載された部分ごとに分けて、それぞれ著作物性を判断して一部分につき著作物性を否定した原審の判断手法に問題があるとした上、被控訴人らは、その各記述部分の著作物性を、一次的には、その属する原告各記述それぞれの全体が一個の著作物であり、その一部として著作物性を有すると主張していると理解すべきである以上、著作物性の有無の判断は、まず、これらそれぞれの記述全体について行われるべきであり、上記各記述部分は、いずれもさほど長いものではないこと、分けられて転載された部分同士が近接していることを考慮すると、上記各記述部分については、全体として一個の転載行為とみるべきであって、転載行為についての評価も転載文全体を単位として行うべきであり、転載された部分ごとに分けて行うべきでないとした事例。
殺人被告事件 さいたま地判平成14(2002)年11月1日  判決文 携帯電話のいわゆる出会い系サイトで知り合った男性と交際して妊娠し、男児を出産したが,便器内で産声を上げている同児の口腔内にトイレットペーパーの固まりを詰め込んでのどをふさぎ、同児を窒息死させて殺害した事件。
フェミニスト”をやっつけろ!」HP公開事件 福岡地判平成14(2002)年11月12日  判決文 インターネットを利用した名誉毀損刑事事件。
 
強姦被告事件 さいたま地判平成14(2002)年12月13日 判決文 僧侶で寺の副住職をしていた被告人が,携帯電話のいわゆる出会い系サ
イトで知り合った12歳の被害者を2回にわたり姦淫したという事案。
 
不正アクセス禁止法違反事件 東京地判平成14(2002)年12月25日判時1846号159頁 不正アクセス禁止法違反の成立が認められた事件。
 
2ちゃんねる「ペット大好き掲示板」事件 (動物病院事件)控訴審判決 東京高判平成14(2002)年12月25日判例時報1816号52頁・サイバー法判例解説58頁  判決文 控訴棄却。
原審被告である控訴人による、対抗言論の理論によれば名誉毀損が成立しない、本件各発言の公共性、目的の公益性、内容の真実性が明らかではないから削除義務の負わない、本件にプロバイダ責任法が適用され、同法の制定経緯等に照らすとプロバイダは直接名誉毀損に当たる発言をした者ではなく、発言の公共性、目的の公益性、内容の真実性を判断することができないから、名誉毀損における真実性等の存否についてもプロバイダの責任を追及する者が主張立証責任を負う、匿名の発言も表現の自由の一環として保障されるべきである、不正アクセス禁止法の立法過程において議論の結果接続情報の保存義務が否定されたということから、電子掲示板における匿名性は削除義務の根拠としてはならない等の控訴人の主張をすべて退けた事例。
住居侵入、窃盗、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件 東京高判平成14(2002)年12月17日判例時報1831号155頁 ストーカー行為に係る電子メールを送信・保管したパソコンは、犯罪に関しない電磁記録を含めてその全部を、犯行供用物件として没収しうるとした事例。
pimca事件 東京地判平成15(2003)年1月28日・判例時報1828号121頁
  判決文
被告らによるスケジュール管理用ソフトウェア製品「pimca」等の制作販売行為が、インターネット上で原告が頒布するプログラム製品との関係で、@不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当する、A原告製品に対する著作権(複製権、翻案権)を侵害する、B民法709条の不法行為に当たる、等と主張して、被告製品の販売又は頒布等の差止め及び損害賠償を請求したが、請求を棄却した事例。
ファイルローグ事件(日本音楽著作権協会申立)中間判決 東京地中間判平成15(2003)年1月29日 判例時報1810号29頁・サイバー法判例解説60頁  判決文 被告会社が提供する電子ファイル交換サービス「ファイルローグ」は、MP3ファイル交換分野については、利用者をして、市販レコードを複製したMP3ファイルを自動公衆送信及び送信可能化させるためのサービスの性質を有し、同サービスにおいて送信者がMP3ファイルの自動公衆送信及び送信可能化を行うことは被告会社の管理下に行われ、被告会社も自己の営業上の利益を図って送信者に上記行為をさせていたことから、被告会社は原告の管理著作物の自動公衆送信及び送信可能化を行っているものと評価でき、原告の有する自動公衆送信権及び送信可能化権の侵害の主体であるとした上、被告会社は同サービス運営の際、前記侵害防止のための措置義務があったが、何らの有効な措置を採らず漫然と同サービスを運営して原告の送信可能化権及び自動公衆送信権を侵害したから過失があり、同サービス提供行為は不法行為を構成し、被告会社の活動は被告会社取締役たる相被告の活動と同視できるとして、被告らには原告の被った損害を共同不法行為により連帯して賠償する責任があるとした中間判決。
ファイルローグ事件(レコード会社申立)中間判決 東京地中間判平成15(2003)年1月29日 判例時報1810号29頁  判決文 被告会社が提供する電子ファイル交換サービス「ファイルローグ」は、MP3ファイル交換分野については、利用者をして、市販レコードを複製したMP3ファイルを自動公衆送信及び送信可能化させるためのサービスの性質を有し、同サービスにおいて送信者がMP3ファイルの送信可能化を行うことは被告会社の管理下に行われ、被告会社も自己の営業上の利益を図って送信者に上記行為をさせていたことから、原告らが著作隣接権を有する各レコードの送信可能化を被告会社が行っているものと評価でき、原告らの有する送信可能化権の侵害の主体であるとした上、被告会社は同サービス運営の際、前記侵害防止のための措置義務があったが、何らの有効な措置を採らず漫然と同サービスを運営して送信可能化権を侵害したから過失があり、同サービス提供行為は不法行為を構成し、また、被告会社の活動は被告会社取締役たる相被告の活動と同視できるとして、被告らには原告らの被った損害を共同不法行為により連帯して賠償する責任があるとした中間判決。
通話料金等請求事件 東京簡判平成15(2003)年3月14日  判決文 電気通信事業を営む原告が、契約者である被告に対し通話料金等の支払を求めたところ、被告は、利用者の気付かないままに国際電話サービスを利用させるような接続システムを設定していた原告が、トラブル防止のために必要な一定の措置を講じないまま、使用料金の支払いを請求するのは信義則に反し許されないとして争っている事案で、請求を 認容した事例。
ヘルストロン事件 大阪地判平成15(2003)年3月20日  判決文 商標権を有し、「ヘルストロン」という名称の電位治療器(原告商品)の製造販売を行っている原告が、新聞、インターネットなどに「ヘルストロン」の表示を付した広告を行って中古の原告商品を販売している被告に対して、商標法2条3項8号、36条1項、37条1号又は不正競争防止法2条1項1号、3条1項に基づき、「ヘルストロン」という名称の使用差止めを請求した事案で、請求を棄却した事例。
ドコモ迷惑メール損害賠償請求事件 東京地判平成15(2003)年3月25日 判決文  毎日新聞 携帯電話事業等を営む原告(NTTドコモ)から、迷惑メール防止対策の一環として開始された「特定接続サービス」の提供を受けていた被告が、これを悪用して大量の宛先不明の電子メールを送信したとして、原告が被告に対し、同サービスの約款等に違反した債務不履行に基づき損害賠償金等の支払を求めた事案である。同サービスは、迷惑メールの大量発信によって生じる正常な電子メールの遅延を解消するために専用の接続口を設けたもので、迷惑メールを防止するための所定の措置を採ることを条件とした上で、事業者は一定の利用料(固定額)を支払う代わりに、この接続口から円滑かつ確実に電子メール送信のサービスを受けることができるというものであった。本判決は、同サービスを利用して大量の宛先不明のメールを送信してはならないという約定に被告は拘束されるとした上、電子メール通信料は受信者に課金する仕組みのため、原告は正常なメールが送信されたならば受信者に課金しうるのに、宛先不明メールが送信された場合、自己の設備の利用に応じた料金を徴収できなくなるから、これらが正常なメールだったとしたときに課金しうる金額が原告の受けた損害として認められるとして、メール1通あたりの平均的な通信料に被告が送信した宛先不明のメール数を乗じた額を原告の損害として認定した(被告の本件行為に関する調査費用と弁護士費用を別途認定)。
家庭教師派遣業自主規制委員会事件 東京地判平成15(2003)年3月28日  判決文 被告は、原告自主規制委員会が松山地方裁判所において訴外Bと争っている事件に関して、訴外Bを応援する立場を取っており、インターネット上に書き込まれた原告自主規制委員会及び同原告の理事長に対する誹謗中傷に対し、異を唱えることもなく、また、注意の書き込みをすることもなく同調しており、これは同原告に対する誹謗中傷行為であるとする原告らの主張に対し、請求を棄却した事例。
眼科発信者情報開示請求事件 東京地判平成15(2003)年3月31日判例時報1817号84頁  判決文  記事 近視矯正クリニックを運営する医療法人が電子掲示板に「患者が失明」などと虚偽の書き込みをされて営業上の損害を受けたと主張して行った、ヤフーに対するプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求が認容された事例。 訴え提起後ヤフーは、投稿者のメールアドレスだけを開示し、本人が原告側に身元を明らかにして謝罪したが、投稿者が競合する医療機関関係者だったので、組織ぐるみの疑いがあり、発信元パソコン特定の必要があるとして、IPアドレス及び発信時刻の開示を求めたもの。
羽田タートルサービス発信者情報開示請求事件 東京地判平成15(2003)年4月24日金判1168号8頁  記事 通信を媒介するだけのプロバイダ(接続業者)は、開示請求の対象にはならないとした事例。
デムシス事件 東京地判平成15(2003)年5月28日  判決文 被告に対し「デムシス」という名称のインターネット上で顧客管理を行うアプリケーションソフトウェアの作成を発注した原告が、被告の作成したデムシスに法律上の瑕疵があると主張して瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求(一部請求)したところ、請求を棄却した事例。
@SEO.COM事件 大阪地判平成15(2003)年5月29日  判決文 原告の著作物たる書籍の一部を被告サイトに掲載した行為が、原告の複製権、公衆送信権、氏名表示権を侵害したとして差止め請求及び損害賠償請求が認容された事例。
「ジジ」商標登録無効審決取消請求事件 東京高判平成15(2003)年6月12日  判決文 「近年は、ファックスやインターネットの普及に伴い、文字等の視覚情報による簡易、迅速かつ確実な取引が可能となっており、このような状況に照らすと、商品の類否判断に当たって考慮すべき要素の中で称呼の占めるウェイトが他の要素に比して高いということはできない。」「商品に関する情報という観点でみるとき、特に、化粧品に関しては、国内外の商品について雑誌、ダイレクトメール、インターネットなどを通じて、販売元のみならず効能や特徴等も含めた詳細な商品情報が豊富に提供され」る等の理由に基づき、本件商標「ジジ」と引用商標「JUJU」とは、互いに相紛れることのない非類似の商標というべきであるとして請求が棄却された事例。
不正アクセス禁止法違反事件 東京高判平成15(2003)年6月25日判時1846号155頁 不正アクセス禁止法違反を認めた原判決に対する控訴が棄却された事例。
2ちゃんねる・女性プロ麻雀士事件 東京地判平成15(2003)年6月25日 毎日新聞記事 2ちゃんねる掲示板における書き込みが女性プロ麻雀士に対する名誉毀損に該当するとして、2ちゃんねる掲示板管理者に対する書き込みの削除請求と損害賠償請求とが認容された事例。
ネットオークション事件 大阪高判平成15(2003)年7月11日  判決文 ネットオークションにより自動車の落札を代行した者が依頼者に対して売主としての瑕疵担保責任を負わないとされた事例。
2ちゃんねる・DHC事件 東京地判平成15(2003)年7月17日   判決文 インターネット上の電子掲示板において名誉及び信用の毀損に当たる発言が書き込まれた場合について,電子掲示板の運営・管理者には前記発言を削除すべき条理上の義務があるとし,運営・管理者の損害賠償責任が認められた事例。
パワードコム発信者情報開示請求事件 東京地判平成15(2003)年9月12日 判決文 「WinMX」によるインターネット経由の情報流通により自己のプライバシー権を侵害された旨主張する原告らが、当該情報の流通に当たり発信者側の通信設備とインターネットとの間の通信を媒介したインターネット・サービス・プロバイダ事業者(被告)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、上記発信者の氏名及び住所の開示を求めた事案で、開示請求が認められた事例。
厚生労働省ホームページ掲載情報国家賠償請求事件 名古屋地判平成15(2003)年9月12日判時1840号71頁 判決文 厚生省(厚生労働省)がそのホームページ上に,歯科医師の保険医取消処分等の事実を当該医師の保険医の再登録等が可能となった後も掲載し続けた場合において,国家賠償法1条1項の責任が肯定された事例。
通貨偽造・同行使被告事件 新潟地判平成15(2003)年9月16日 判決文 出会い系サイトにアクセスして知り合った女性に援助交際の対償等として支払う金銭に困り,同女に上記対償として渡す金銭に使用すべく,スキャナー機能を搭載したカラーコピー機及びパソコンを使用し,真正な金額1万円の日本銀行券の表面及び裏面の画像を画像情報として取り込み,その大きさや色調を修正するなどして同パソコンのハードディスク内に保存しておいた真正の1万円の日本銀行券の表裏面の画像情報を同パソコンで読み込み,同カラーコピー機を用いてコピー用紙に両面印刷し,これをカッターナイフで裁断するなどして通用する金額1万円の日本銀行券18枚を偽造した上,同女に対し,上記偽造にかかる金額1万円の日本銀行券3枚を真正なもののように装い,援助交際の対償として手渡して行使した事例。
DDIポケット発信者情報開示請求事件第一審 東京地判平成15(2003)年9月17日判タ1152号276頁 判決文 インターネット上の電子掲示板掲に書き込みをした発信者情報に関する開示請求が認められた事例。
児童買春・児童ポルノ法違反事件 大阪高判平成15(2003)年9月18日 判決文 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項にいう「その他の物」とは,同項各号に掲 げられた視覚により認識することができる方法により描写された情報が化体された有体物をいう。コンピュータの記憶装置内に記憶,蔵置された児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を撮影した画像データは,それ自体としては児童ポルノに当たらない。
グレイワールドワイド事件 東京地判平成15(2003)年9月22日 労判870号83頁 労働者は職務専念義務を負うが、「労働者といえども個人として社会生活を送っている以上、就業時間中に外部と連絡をとることが一切許されないわけではなく、就業規則等に特段の定めがない限り、職務遂行の支障とならず、使用者に過度の経済的負担をかけないなど社会通念上相当と認められる限度で使用者のパソコン等を利用して私用メールを送受信しても上記職務専念義務に違反するものではない」とした事例。
ランドマンション事件 横浜地判平成15(2003)年9月24日 判決文 マンションの建築予定地の近隣住民による,ミニコミ誌やインターネットの掲示板での当該マンションの建築に反対する趣旨の表現行為について、当該マンションの建築業者の名誉・信用を違法に毀損するものとは認められないとした事例。
サイボウズ不正競争事件 東京地判平成15(2003)年9月30日 判決文 インターネット上のウェブページへの謝罪広告掲載などの請求が棄却された事例。
ドメイン名情報無断変更処理申請事件 広島地判平成15(2003)年10月21日 判決文 原告からの変更申請がないのに,原告が登録・使用していたインターネット上のドメイン名のネームサーバー等の情報に関して原告以外の第三者からの申請に基づいて変更処理が行われた事案について,当該ドメイン名管理団体の過失は認めず,同団体との間でドメイン名登録申請等の取次に関する業務委託契約を締結し,上記変更処理申請を受理して手続を進めた指定業者の被告に,当該ドメイン名登録者である原告と変更処理申請者の同一性の確認を怠った過失を認め,同被告に損害賠償を命じた事例。
転職情報サイト事件 東京地判平成15(2003)年10月22日判時1850号123頁 判決文 インターネット上に開設するウエブサイト等を利用して会社の転職情報を提供することを業とする被告が、インターネット上に開設するウエブサイトに掲載したA社の転職情報は、原告が創作し、そのウエブサイトに掲載したA社の転職情報を無断で複製ないし翻案したものであり、原告の著作権(複製権、翻案権、送信可能化権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害すると主張して、原告が求めた損害賠償請求が一部認容されたが、掲載行為の差止め及び被告ウェブ上への謝罪広告掲載請求は棄却された事例。
児童買春・児童ポルノ法違反事件 東京地判平成15(2003)年10月23日 判決文 被告人は,インターネットを利用する不特定多数の者に対し,児童ポルノ画像を送信して,児童ポルノを公然と陳列しようと企て,パーソナルコンピュータに接続したインターネットを利用し,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像合計68画像のデータを,乙合資会社が管理するサーバーコンピュータを経由して,株式会社丙管理に係るIPアドレスを割り当てられたサーバーコンピュータに送信し,同コンピュータの記憶装置であるハードディスクにこれらを記憶・蔵置させ,インターネットに接続したコンピュータを利用する不特定多数の者に対し,前記児童ポルノ画像を閲覧可能な状態に設定し,もって,児童ポルノ画像を公然と陳列したものである。
覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反,麻薬特例法違反被告事件 新潟地判平成15(2003)年11月4日 判決文 美容師である被告人が,架空名義口座等を準備した上,インターネットを利用して覚せい剤及び大麻を仕入れ,これをインターネットを通じて売りさばいた覚せい剤取締法,大麻取締法,麻薬特例法違反の事案につき,懲役5年及び罰金50万円の実刑判決が宣告された事例。
So-net発信者情報開示事件 東京地判平成15(2003)年11月28日金商1183号51頁 経由プロバイダもプロバイダ責任制限法にいう「関係開示役務提供者」に該当するとして、電子掲示板に書き込まれた情報の発信者情報の開示請求が認められた事例。
オーディション・コム事件 東京地判平成15(2003)年11月28日 判決文 被告が原告所属芸能タレントのインタビュー記事、肖像写真及び音声メッセージを携帯電話サイト「オーディション・コム」に掲載したことにつき、上記インタビュー記事等を被告発行雑誌「オーディション」12月号にのみ掲載する旨の合意 が成立したと認められ、これに被告が反したとして債務不履行責任が認められた事例。
強盗殺人事件 甲府地判平成15(2003)年12月4日 判決文 被害者になりすまして預金の払戻手続きをしてくれる女性をインターネットの掲示板を通じて確保した上で,同棲相手の女性を強殺した事件。
 
ファイルローグ事件(レコード会社申立)終局判決 東京地判平成15(2003)年12月17日  判決文 前記中間判決に基づき差止請求及び損害賠償責任を認容した終局判決。
ファイルローグ事件(日本音楽著作権協会申立)終局判決 東京地判平成15(2003)年12月17日  判決文 前記中間判決に基づき差止請求及び損害賠償責任を認容した終局判決。
大阪コンピュータ専門学校事件 大阪地判平成15(2003)年12月18日  判決文 被告専門学校に学生として在籍中、同校の実習設備を用いて作成したコンピュータグラフィックス(CG)作品(原告作品)を、被告のテレビコマーシャルに使用するために複製し、被告のパンフレット及びホームページに使用するために、原告作品の画像を静止画として複製したとして求めた損害賠償請求が棄却された事例。
プーマ事件 大阪地判平成15(2003)年12月18日  判決文 被告が被告各標章のいずれかを付した被告商品を店舗で販売するとともに、インターネット上のサイバーモールに出店して販売していた事案で、本件各登録商標権についての原告の商標権及び輸入販売代理店の専用使用権を侵害するものであるとした事例。
ソネットWinMX発信者情報開示事件第1審 東京地判平成16(2004)年1月14日判タ1152号134頁 発信者情報開示請求を認容した事例。
DDIポケット発信者情報開示請求事件控訴審 東京高判平成16(2004)年1月29日  毎日新聞記事 控訴棄却。
誕生花事件 大阪地判平成16(2004)年2月12日  判決文 写真家である原告が、「誕生花」としての花の選択並びにこれについて原告が撮影した花の写真及び花言葉の組合せ全体について著作権を有すると主張して、@ これを被告大原種苗が原告に無断でパンフレットに掲載した行為が原告の著作権(複製権)を侵害するとして、その損害賠償を、A これを被告Bが原告に無断で自己の開設したインターネット上のホームページに掲載した行為が原告の著作権(公衆送信権)を侵害するとし、さらに被告大原種苗が被告Bの上記行為に許諾を与えた行為が原告に対する不法行為であるとして、被告両名に対してその損害賠償を請求した事案。
自由軒事件 大阪地判平成16(2004)年2月19日  判決文 ドメイン名「jiyuuken.co.jp」の使用差止請求等が認容された事案。
有名弁護士事件 東京地判平成16(2004)年2月19日 原告が、被告の発行した月刊誌及びその開設したインターネット上のホームページに掲載された記事により名誉を毀損され、かつ、プライバシー及び肖像権を侵害されたとして、被告に対し、損害賠償金の支払を求める事案について一部認容した事例。
「ファンブック 罪に濡れたふたり」事件 東京地判平成16(2004)年3月11日判時1893126  判決文 漫画家である原告AことB及び出版社である原告株式会社小学館(以下「原告小学館」という。)は,書籍「ファンブック 罪に濡れたふたり〜Kasumi〜」(以下「本件書籍」という。)に収録された対談記事について,著作権を共有するところ,被告が運営するインターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」に,上記対談記事が無断で転載されて送信可能化され,自動公衆送信されたことにより,原告らの送信可能化権,公衆送信権が侵害されたと主張し,被告に対し,著作権法112条1項に基づき当該対談記事の送信可能化及び自動公衆送信の差止めを求めるとともに,原告小学館の削除要請にもかかわらず,被告が転載された当該対談記事の削除を怠ったことで原告らに損害が発生したと主張し,被告に対し民法709条に基づき,損害賠償(訴状送達の日の翌日からの遅延損害金を含む。)を請求したが,棄却された事案。
ライントピックス事件 東京地判平成16(2004)年3月24日判時1857号108頁  判決文 被告ホームページ上において、「ライントピックス」と称するサービスを提供している被告に対し、原告ホームページ上に掲出される新聞記事見出し及びこれと類似する記事見出しを複製等していることが、著作権侵害に該当するとして複製等の差止等及び損害賠償を求めた事案で、著作物性を否定するなどして、請求を棄却した事例。
ネットオークション中古自動車瑕疵事件 大阪地判平成16(2004)年4月15日 判時1909号55頁 インターネットオークションにより売買された中古自動車に「隠レタル瑕疵」が認められた事例。
Careerjapan事件 大阪地判平成16(2004)年4月20日  判決文 第1事件は、原告商標権の商標権者である第1事件原告兼第2事件被告(以下「原告」という。)が、被告使用標章をインターネットホームページのサイトで使用する第1事件被告兼第2事件原告(以下「被告」という。)の行為は原告商標権を侵害するとして、被告に対し、商標法36条1項に基づきこれらの標章の使用の差止めを求めるとともに、損害賠償を請求している事案である。第2事件は、被告商標権の商標権者である被告が、原告使用標章をインターネットホームページのサイトで使用する原告の行為は被告商標権を侵害するとして、原告に対し、商標法36条1項に基づき同標章の使用の差止めを求めるとともに、損害賠償を請求している事案である。
第1事件被告が、第1事件被告の運営するインターネットホームページのサイトで提供する業務において、被告使用標章の一部を使用することが原告商標権を侵害するものであるとして、差止め及び損害賠償請求を認容した事例。
交通事故被害者遺族名誉毀損事件 大阪高判平成16(2004)年4月22日判タ1169号判決文 交通事故の加害者である被告人が、死亡した被害者の遺族たる父母の名誉を毀損する記事をサーバーコンピュータに記憶・蔵置させ、不特定多数のインターネット利用者らに閲覧可能な状態を設定したことにつき名誉毀損罪で有罪判決を受けた ことに対し、ホームページの掲示板に本件書き込みがなされている事実を知り、かつ、その時点で被告人が犯人であることを知ったにもかかわらず、それから6ヶ月以上経過した日に告訴をしたものであるから 前記母の告訴は不適法である等を理由に控訴した事件で、控訴が棄却された事例。
セコム・ステッカー販売事件 東京地判平成16(2004)年5月24日  判決文 製造したステッカーを、被告がインターネットのヤフーオークションにおいて販売し、販売のために展示している行為が、原告の商標権を侵害するとして、被告の上記行為の差止等と損害賠償請求を認容した事例。
ソネットWinMX発信者情報開示事件控訴審 東京高判平成16(2004)年5月26日判タ1152号131頁 発信者情報開示請求を認容した事例。
キタムラ機械事件 東京地判平成16(2004)年5月28日  判決文 原告が被告に対し、(1)主位的に、被告が被告標章を被告製品、そのカタログ及びそのインターネット上のホームページに使用し、また、各標章を付した製品を販売し、販売のために展示する行為が本件合意に違反すると主張して、本件合意書2条、7条に基づき、被告標章の使用差止め及び違約金の支払を請求するとともに、(2)予備的に、被告の上記行為が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に当たると主張して、同法3条、5条に基づき、被告標章の使用差止め及び損害賠償を請求したが、棄却された事例。
発信者情報開示請求事件 東京地判平成16(2004)年6月8日判タ1212号297頁 WinMXによる送信につき発信者情報開示請求が認容された事例。
デンバー事件 東京地判平成16(2004)年6月11日 判タ1182号323頁  判決文 原告作成のインターネットホームページ上の米国デンバー市を紹介したウェブサイトにおいて、原告が撮影した、原告の知人であるデンバー元総領事の写真を掲載していたところ、平成13年当時、社会的に問題となっていた外務省における不祥事に関連する報道の一環として、被告が放送したテレビジョン番組(以下「本件番組」という。)の中で、原告に無断で、上記元総領事の写真が使用されたことについて、原告が、被告に対し、同写真の著作権(著作権法21条〔複製権〕、同法23条〔公衆送信権〕)及び著作者人格権(同法19条〔氏名表示権〕、同法20条〔同一性保持権〕)を侵害されたとして、@4521万円の損害賠償(同法114条3項)、A上記写真の複製・公衆送信の差止め(同法112条1項)、B上記写真及び上記写真が撮影された録画テープの廃棄(同法112条2項)、C被害回復措置としての謝罪放送及び謝罪広告(同法115条)を求め、一部認容された事例。
モルガン・スタンレー・ジャパン事件 東京地決平成16(2004)年8月26日 労判881号56頁 「債権者は、債務者の情報通信システム施設を利用して別件訴訟を提起したことを仕事上及び個人的つきあいを通じて知り合った顧客・友人・知人・マスメディアらに周知したことが認められ……別件訴訟は債務者の業務に関連するとはいえ飽くまで債権者の個人的な訴訟であるから、かかる行為は、限られた私的目的を除いて業務以外の情報通信システムの利用を禁じた行為規範……に違反するものであり、債務者の懲戒権が及ぶ」が、「債権者は、上記電子メールにおいて、別件訴訟は債務者とは無関係に個人的になされたものであることを表明しており……、そもそも上記電子メールの受信者は、もともと債権者が債務者の従業員であることを知っていたのであるから……、第三者が接するのとは異なり、債務者のメールアカウントが使用されたことにより、通知の内容について債務者が承諾しているとか、債務者の指示によるものであるなどと認識するとはいえず、かかる行為によって債務者の信用等が毀損されたとか、そのおそれがあるということもできない。」として、「上記のような程度の業務以外の情報通信システムの利用に対する懲戒としては、解雇は重きに失する」とした事例。
爆発物取締罰則違反被告事件 福井地判平成16(2004)年9月7日  判決文 校時代に同級生からいじめを受けたことで不登校になり,退学せざるを得なくなったのは彼らの所為であると逆恨みし,その復讐のために、インターネットのホームページや雑誌等から爆弾についての情報を得るなどして,消火器を用いた手製の爆発物を上記同級生の両親が住む住居に設置して使用し,その他に自動車内及び被告人方において手製の爆発物7個を所持したという事案において,被告人に対して,懲役12年を言い渡した事例。
maxellgrp.com事件 大阪地判平成16(2004)年7月15日  判決文 原告が、自己が使用する商品等表示が著名ないし周知であり、被告がこれと類似する商号、営業表示及びドメイン名を使用していたと主張し、被告のこれらの行為が不正競争防止法2条1項2号ないし1号及び12号の不正競争行為に該当するとして、損害賠償を請求した事案で、請求を一部認容した事例。
録画ネット事件 東京地決平成16(2004)年10月7日判時1895号120頁 テレビ番組の受信・録画機能を有するパソコンをネットを介して操作する方法により、テレビ番組の録画・視聴を可能とするサービス提供業者に著作隣接権侵害が認められた事例。
Winny事件 京都地判平成16(2004)年11月30日判時1879号153頁  判決文 ファイル共有ソフトWinny(ウィニー)を使用してインターネット利用者に映画の情報を自動公衆送信し得るようにした行為が、著作権法違反になるとされた事例。
eサイト事件 東京地判平成16(2004)年12月1日  判決文 登録商標「e-sight」を用いて長崎県内の情報を提供するサービスを行っている原告が、ホームページを開設し,「(ドコモ)eサイト」等の標章を使用して携帯電話に関連する商品に関する情報の提供等を行っている被告に対し、商標権侵害を理由として使用の差止め、並びに損害賠償又は不当利得の返還を求めたが、棄却された事例。
K工業技術専門学校私用メール事件第一審 東京地判平成16(2004)年12月17日判決 労判888号57頁 被告経営の専門学校に教師として雇用されていた原告が、被告より勤務先のパソコンを使用してインターネット上の出会い系サイトに投稿してメールを送受信したことを理由に行われた懲戒解雇の有効性を争った事案。
ヤフー発信者情報開示事件 名古屋地判平成17(2005)年1月21日判時1893号75頁 発信者情報開示等が棄却された事例。
ヤフーショッピング事件 東京簡判平成17(2005)年2月23日  判決文 ヤフーショッピングにおいてパソコンが売買の対象物とされたのはサイト上に誤って表示されたものか否かが争点となった事件。
「ファンブック 罪に濡れたふたり」事件 東京高判平成17(2005)年3月3日判時1893号126頁  判決文 原審原告の逆転勝訴。
ダスキンオンブズマン事件 大阪地判平成17(2005)年3月17日  判決文 被告がそのウェブサイトにおいて,平成16年3月4日から同年5月26日までの84日間,文書(原告株式会社ダスキン代理人弁護士作成名義の意見書,同原告の取締役会議事録)を電磁的記録に変換して公衆送信したことにより,原告株式会社ダスキン(以下「原告ダスキン」という。)の名誉,情報プライバシー(人格権を含む。)又は信用が毀損され(民法709条,710条),原告ダスキンが上記文書について有する著作権が侵害され(著作権法21条,23条),更に原告ダスキンの営業秘密が加害目的で開示されたと主張し(不正競争防止法2条1項7号),また,原告A(以下「原告A」という。)の名誉,情報プライバシーが毀損された(民法709条,710条)と主張して,原告ダスキンの人格権,著作権又は不正競争防止法3条1項に基づき,上記文書の公衆送信の差止めを求めるとともに,名誉,情報プライバシー(人格権を含む。)若しくは信用の毀損,著作権の侵害,又は不正競争による原告ダスキンの損害として1100万円,名誉,情報プライバシーの毀損による原告Aの損害として550万円と,最後の不法行為又は不正競争のあった日(被告サイトでの公衆送信の終わった日)である平成16年5月26日から支払済みまでの遅延損害金の賠償を求めた事案で,請求を一部認容した事例。
架空請求メール事件 東京地判平成17(2005)年3月22日 判時1916号46頁 架空請求についてサイト運営者に不法行為責任を認めた事例。
デンバー事件控訴審判決 東京高判平成17(2005)年3月24日  判決文 一部認容。
ビジュアルディスク事件 大阪地判平成17(2005)年3月29日  判決文 CD−ROMの制作頒布差止め等,謝罪広告,損害賠償及び慰謝料請求、CD−ROMに収録されたデジタル画像データの一部を,ウェブサイトへ掲載するために同一性を失うような低解像度のウェブ用画像を蓄積目的で複製し,同ウェブ用画像を用いて無料ダウンロードサービスを行い,その際原告の氏名を表示しなかったことにより,原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)をそれぞれ侵害したと主張して,被告らに対し,上記ウェブ用画像の掲載・ダウンロードサービスの差止め等,損害賠償及び慰謝料請求を一部認容した事例。
ファイルローグ事件(日本音楽著作権協会申立)控訴審判決 東京高判平成17(2005)年3月31日  判決文 控訴棄却。但し一部訂正。
ファイルローグ事件(レコード会社申立)控訴審判決 東京高判平成17(2005)年3月31日  判決文 控訴棄却。但し一部訂正・変更。
「tabitama.net」事件 東京地判平成17(2005)年3月31日  判決文 登録ドメイン名「http://www.tabitama.net」使用差止等の請求が棄却された事例。
捜査情報漏洩事件 札幌地判平成17(2005)年4月28日  判決文 当時少年であった原告を被疑者とする捜査情報が,警察官の私有パソコンからインターネットを通じて外部に流出した事故につき,国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償請求が認められた事例。
懲戒処分無効確認等請求事件 札幌地判平成17(2005)年5月26日  判決文 団体職員が就業時間中に,業務用に配置されたパソコンを用いて,私用のためのメールを職員相互間で行った,OA機器を私用に使用したなどとして受けた複数の懲戒処分(降任,減給)についての無効確認,賃金控除分ないし降任処分前と処分後の手当の差額分の金員及び慰謝料の支払を求めた事案につき,懲戒処分については懲戒権の濫用として無効であるものの確認の利益を欠いて不適法として訴え却下,賃金控除分ないし手当の差額分の支払については一部認容,慰謝料については棄却された事例。
強盗・強姦事件 札幌地判平成17(2005)年6月10日 判決文 出会い系サイトを悪用した強盗・強姦等事件。
自殺幇助被告事件 富山地判平成17(2005)年6月13日 判決文 被告人が,インターネットの自殺サイトを通じて知り合ったA及びBと共に集団自殺をしようと企て,Bと共謀の上,a市b先のc川河川敷d橋梁下付近において,被告人及びBが同所に駐車中の普通乗用自動車内に燃焼している練炭を入れた七輪2個を持ち込み,自ら睡眠薬等を服用して同車後部座席に乗り込んだAに一酸化炭素を吸入させ,よって,そのころ,同所において,Aを一酸化炭素中毒により死亡させ,もって人を幇助して自殺させた事案で自殺幇助罪の成立を認めた事例。
発信者情報開示請求事件 東京地判平成17(2005)年6月24日判時1928号78頁  判決文 原告が制作したレコードが氏名不詳の者によって複製され、WinMXというファイル交換共有ソフトウェアを使用して公開され、原告の送信可能化権を侵害されたとして、氏名不詳者が利用していたサーバーの提供者とされる被告らに対し、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づいて、氏名不詳者らの氏名及び住所の開示を求めた事案で請求が認容された事例。
「デアッチャマン」事件 名古屋地判平成17(2005)年6月30日  判決文 被告が、原告が開設するウェブサイト「出会いDB(出会い学校)」内の、原告作成のバナーを無断でコピーした上、自らのサイト「デアッチャマン」に掲載し、公衆送信したとして、著作権侵害に基づく損害賠償を求めた事案で、バナー制作費、それによる収入、侵害状況等から著作権法114条3項に基づく使用料相当額を認定した事案。
損害賠償請求事件 神戸地姫路支判平成17(2005)年8月9日判時1929号81頁 インターネットオークション業者によるネットオークションの運営が、特定商取引法51条所定の「業務提供誘引販売取引」に該当しないとされた事例。
損害賠償請求控訴事件 東京地判平成17(2005)年9月2日判時1922号105頁 ショッピングサイト開設者が送信する受注確認メールは、被控訴人の承諾と認めることはできないとした事例。
詐欺被告事件 東京高判平成17(2005)年9月6日高等裁判所刑事裁判速報集(平17)号186頁 いわゆる振り込め詐欺事件。
強盗強姦等被告事件 神戸地判平成17(2005)年9月22日  判決文 出会い系サイトを悪用した強盗強姦等被告事件。
ライントピックス事件控訴審 知財高判平成17(2005)年10月6日  判決文 原判決を破棄して、請求を一部認容した事例。
動物病院事件 :決平成17(2005)年10月7日 管理人の上告を棄却する決定をした事例。
商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求本訴事件、商標権侵害差止等請求反訴事件 東京地判平成17(2005)年10月11日判時1923号92頁  判決文 「反訴被告(本訴原告)は,別紙標章目録記載の各標章を包装若しくは容器に付した化粧品を販売し,引き渡し,販売若しくは引渡しのために展示し,輸入し,化粧品に関する説明書,パンフレットその他の広告に前記各標章を付して展示若しくは頒布し,又は化粧品に関する情報に前記各標章を付してインターネット・ホームページで提供してはならない。」「反訴被告(本訴原告)は,別紙標章目録記載の各標章を付した化粧品,包装,容器,説明書,パンフレットその他の広告を廃棄し,前記各標章を記載したインターネット・ホームページから前記各標章を付した化粧品に関する情報を削除せよ。」等の請求が認容された事例。
選撮見録事件 大阪地判平成17(2005)年10月24日判時1911号65頁 テレビ放送事業者である原告らが、被告が販売する集合住宅用テレビ番組録画用システム「選撮見録」が、原告らがテレビ番組の著作者として有する著作権(複製権及び公衆送信権)並びに原告らが放送事業者として有する著作隣接権(複製権及び送信可能化権)の侵害にもっぱら用いられるものであると主張し、上記各権利に基づいて、被告に対し、その商品の使用等及び販売の差止め並びに廃棄を請求した事案。
ダスキンオンブズマン事件控訴審 大阪高判平成17(2005)年10月25日  判決文 大阪地判平成17(2005)年3月24日の控訴審判決。控訴棄却。
携帯電話匿名レンタル事件 京都地判平成17(2005)年10月26日判時1919号132頁  判決文 匿名による取引を予定していない携帯電話レンタル契約の締結に際し,氏名及び住所を明らかにしない顧客に対して,漫然と携帯電話のレンタルを行い,当該携帯電話が,不法行為(架空請求)の遂行のための必須の手段として用いられた場合に,当該レンタル業者の過失による共同不法行為責任を認めた事例。
捜査情報漏洩事件控訴審 札幌高判平成17(2005)年11月11日  判決文 札幌地判平成17年4月28日の控訴審判決。
損害賠償請求棄却。非番時に自宅においてインターネットに接続する行為は,警察官の職務行為又は社会通念上職務の範囲に属すると見られる場合に当たらず,また,警察署長及び管理担当者の情報の流失を防止すべき管理義務違反については,管理につき不備はあったが,アンティニーGというウイルスについての情報は一般には広まっていなかった等の事情から,本件捜査情報がインターネットを通じて流出するという結果について予見可能性はあったとはいえないとして,1審判決を取り消し,被控訴人(1審原告)の請求を棄却した事例。
「録画ネット」事件 知財高判平成17(2005)年11月15日  判決文 放送事業者である相手方は、「録画ネット」という名称のサービスを営む抗告人に対し、同サービスは相手方の放送を複製し相手方の著作隣接権を侵害するものである旨主張して、同サービスによる放送の複製の差止めを求める仮処分を申し立てたところ、これを認容する仮処分決定がされた。これに対し、抗告人が本件仮処分決定の取消しを求めて仮処分異議を申し立てたが、原審は、上記仮処分決定を認可する原決定をしたため、これを不服とする抗告人がした保全抗告を棄却した事例。
偽ブランド品販売事件 大阪地判平成17(2005)年12月1日  判決文 原告の有する「GUCCI」等の商標権に係る登録商標に類似した標章を付した財布等を、インターネットオークションを通じて販売した被告らの行為が、原告の有する同商標権を侵害する共同不法行為を構成するとして、被告らに対し損害賠償を命じた事案。
「クルマの110番」事件 大阪地判平成17(2005)年12月8日・判時1934号109頁  判決文 被告会社が開設したウェブサイト上の記載が、原告の登録商標に類似する標章の使用であり、商標権の侵害にあたると主張し、被告会社の代表取締役である被告P2は、上記商標権侵害により生じた損害について有限会社法30条の3第1項に基づく責任を負うと主張して、被告らに対し、損害賠償を請求したが、棄却された事例。
出会い系サイト広告顔写真掲載事件 東京地判平成17(2005)年12月16日判時1932号103頁 出会い系サイトの広告に無断で顔写真が掲載された事案で損害賠償が認容された事例。
suzuken-fc.com事件 名古屋地判平成18(2006)年1月11日  判決文 原告が,被告の商号の要部が原告の商号と同じであることなどを理由に営業主体の誤認・混同をもたらしているとして,被告の商号使用差止め,商号登記の抹消,被告ドメイン名の使用差止め及び損害賠償を求めた事案について,被告の商号使用及びドメイン名使用が不正競争行為に該当するとして,損害賠償の一部を除く請求を認容した事例。
児童養護施設児童虐待告発書込み事件 さいたま地判平成18(2006)年1月20日  判決文 児童養護施設における児童虐待の告発等を目的とするインターネット上の電子掲示板にされた書込みについて,名誉毀損の成立を認めた上,真実であることの証明はなく,真実であると信じるにつき相当の理由も認められないとして,損害賠償が命じられた事例。
損害賠償請求事件 東京地判平成18(2006)年1月30日判時1939号52頁 原告が、いわゆるワンクリック詐欺の被害にあったとして、サイト運営者である被告を訴えた事案である。すなわち、被告運営にかかるサイトに掲載された女性の写真画像をクリックした原告が、画像閲覧サービスの会員登録の意思がないのに自動的に会員登録され、画像閲覧サービスの利用料金名目で不当な支払を請求されたとして、被告に対し、不法行為に基づき損害賠償を請求し損害賠償が命じられた事例。
スメルゲット事件 知財高判平成18(2006)年3月29日判タ1234号295頁 ウェブサイト上の写真をコピーしてウェブサイトに掲載する行為が写真の複製権侵害に該当するとされた事例。
電子マネー不正購入事件 最判平成18(2006)年2月14日判時1928号158頁  判決文 窃取したクレジットカードのカード番号などの情報をクレジットカード決済代行業者の使用する電子計算機に与えて電子マネーを購入した行為が,電子計算機使用詐欺罪に当たるとされた事例。
損害賠償等請求事件 東京地平成18(2006)年4月26日  判決文 原告が,被告に対し,被告のレンタルサーバに保存されたウェブページから不特定の者に送信された情報により,原告の有する商標権が侵害され,又は不正競争防止法2条1項1号・2号上の原告の営業上の利益が侵害されたと主張して,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,発信者情報の開示を求めるとともに,原告からの通知後直ちに被告が上記ウェブページからの発信を停止しなかった行為につき,商標権侵害(不法行為)及び不正競争防止法4条に基づく損害賠償を,発信者情報の開示が遅れた行為につき,不法行為に基づく損害賠償をそれぞれ請求した事案。
火薬類取締法違反,器物損壊,爆発物取締罰則違反被告事件 甲府地判平成18(2006)年5月17日  判決文 かつての交際相手に復縁を断られた被告人が,同女と当時交際していた男性に危害を加えることなどを意図して爆弾の製造及び威力実験を思い立ち,インターネットサイトで調べた方法により無許可で火薬類を製造した上,その威力を確認するため,自動販売機2台に仕掛けて爆発させて自動販売機を損壊したり,山中で爆発させたりしたほか,自宅において更に威力実験のため爆発物を製造したという事案。
ヤフーBB漏えい事件 大阪平成18(2006)年5月19日  判決文 インターネット接続等の総合電気通信サービスの顧客情報として保有処理されていた原告らの氏名・住所等の個人情報が外部に漏えいしたことにつき、同サービスを提供していた被告に、外部からの不正アクセスを防止するための相当な措置を講ずべき注意義務を怠った過失があるとして、原告らの不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容した事例。
損害賠償請求事件 東京地判平成18(2006)年6月6日判時1948号100頁
 
被告の機関である東京国税局が同局のホームページにおいて、原告らの実名を挙げて、原告会社のホームページの記載中に事実に反する部分がある旨公表したことが原告らの名誉・信用を毀損する不法行為を構成し、それにより原告らは無形損害を被ったとして、原告らから被告に対し損害賠償請求したが、棄却された事例。
豊明市議会事件 東京地平成18(2006)年6月7日  判決文 市議会議員が市議会一般質問の内容及びこれに基づく議員の見解を広報し及びウェブサイトに掲載した記事につき、原告らの社会的評価を低下させるものと認定し、記事の大部分について真実性・相当性の抗弁が成立しないほか、市議会議員であることによる免責も認められないとして、名誉毀損の成立を認めた事例。
損害賠償請求事件 大阪地判平成18(2006)年6月23日・判時1956号130頁 プロバイダ責任制限法4条4項に基づく損害賠償請求が棄却された事例。
まねきテレビ仮処分事件 東京地平成18(2006)年8月4日 判時1945号95頁  判決文 債務者は,「まねきTV」という名称で,利用者がインターネット回線を通じてテレビ番組を視聴できるようにするサービス(本件サービス)を提供している。本件サービスは,ソニー株式会社製の商品名「ロケーションフリーテレビ」の構成機器であるベースステーションを用い,インターネット回線に常時接続する専用モニター又はパソコンを有する利用者が,インターネット回線を通じてテレビ番組を視聴できるものである。本件は,債権者が債務者に対し,債務者が行う本件サービスが,本件放送に係る債権者の送信可能化権を侵害していると主張して,本件放送の送信可能化行為の差止めを求めた事案で申立てを却下した事例。
殺人被告事件 釧路地平成18(2006)年8月21日  判決文 特定の女性との間でパソコンなどを使用して親密な内容の電子メールを送受信していた夫を殺害した妻に、殺人罪の成立が認められた事例。
発信者情報開示請求事件 東京地平成18(2006)年9月25日  判決文 レコードを圧縮・複製して作成した電子ファイルをWinMX(ファイル交換共有ソフト)を利用してインターネット上で自動的に送信し得る状態にした行為が,レコード会社の送信可能化権の侵害に当たるとして,当該行為をした者のコンピュータとインターネットとの通信を媒介したプロバイダに対する発信者情報の開示請求(プロバイダ責任制限法4条1項)を認容した事例。
Winny開発者著作権法違反幇助事件 京都地平成18(2006)年12月13日 判タ1229号105頁 Peer to Peer(P2P)技術 を用いたファイル共有ソフト「Winny」の開発者である元東京大学助手に対し、インターネット上における同ソフトの提供行為が、著作権法違反の罪(公衆送信権侵害−同法119条1号、23条1項)の幇助犯に該当するとして、罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決を言い渡した事例。
まねきテレビ仮処分事件抗告審 知財高判平成18(2006)年12月22日裁判所サイト 抗告棄却の決定
まねきテレビ著作隣接権仮処分命令申立事件 知財高判平成19(2006)年1月31日 当裁判所平成18年(ラ)第10012号著作隣接権仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件において,当裁判所が平成18年12月22日にした決定(以下「本件決定」という。)に対し,申立人から許可抗告の申立てがあったので,当裁判所は,本件抗告を許可しないと決定する。 
TBC顧客情報漏えい事件 東京地平成19(2007)年2月8日判時1964号113頁 請求一部認容
自殺系サイト事件 大阪平成19(2007)年3月28裁判所サイト 性嗜好障害を有する被告人が、インターネットの自殺サイトで知り合った自殺志願者3名(うち1名は未成年者)を次々に誘い出し、鼻や口を手で塞ぐなどして窒息死させ、その死体を山中に遺棄し、その間、未成年被害者の父親に対し脅迫電話を掛けたという快楽目的の連続殺人等の事件について、被告人に完全責任能力を認め、死刑に処した。
MYUTA事件 東京地平成19(2007)年5月25日判時1979号100頁・判タ1251号319頁 判決文 音楽データネットワークストレージサービスにつき、アップロード・ダウンロード行為の主体はユーザーではなくサービス提供事業者であるとした事例。 これによってユーザーの海賊版行為は取り締まりの対象外となり、またユーザーは上記行為につき通信の秘密の保障対象外となるという、たいへん困った判決。本判例に関する岡村の評釈
選撮見録事件 大阪高判平成19(2007)年6月14日裁判所サイト 原判決を変更して、控訴人は、被控訴人毎 日放送、同朝日放送、同関西テレビ及び同讀賣テレビとの間では、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県及び和歌山県の各府県内の集合住宅向けに、被控訴人テレビ大阪との間では、大阪府内の集合住宅向けに、本判決別紙商品目録記載の商品を販売して同集合住宅の入居者にその使用による放送番組の録音・録画をさせてはならないとした事例。
損害賠償等請求事件 大阪平成19(2007)年7月26日裁判所サイト 中国法人の日本語版ウェブサイトのウェブページに,原告らが同法人の代理店であるかのような表示がなされ,さらに同ページに原告会社が開設するウェブサイトにリンクを設定された原告らが,上記中国法人及び被告による上記行為は原告らの名誉及び信用を毀損する共同不法行為を構成するとともに,原告会社との関係では不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当し,原告Xとの関係では氏名権侵害の不法行為も構成すると主張して,原告会社は民法709条の不法行為又は不正競争防止法4条に基づき,原告Xは民法709条の不法行為に基づき損害賠償(訴状送達の日の翌日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む。)を請求し,併せて民法723条又は不正競争防止法14条に基づき被告ウェブサイトのトップぺージへの謝罪広告の掲載を求めた事案。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反、私電磁的記録不正作出、同供用被告事件 千葉地判平成19(2007)年8月7日 裁判所サイト 架空請求詐欺を行う組織の内紛から,被告人両名を含む多数の構成員が,4名の構成員を監禁の上,凄惨な暴行を加えて死亡させ,死体を山林に埋めた殺人,傷害致死,死体遺棄等の事案につき,被告人両名が実行犯らに3名の殺害を含めた解決策の実現を委ねたことなどを理由に殺害の共謀を認め,3名の殺人と1名の傷害致死の訴因に対し,1名に対する殺意を認めず,2名の殺人と2名の傷害致死を認定し,犯行態様の残虐さや結果の重大性を指摘した上で,グループを統括する首謀者として被害者の殺害に向けて中心的かつ積極的な役割を果たした被告人に死刑を,監禁や暴行を中心的に行い,実行犯らに殺害等の方法による解決を押し付けるなど,その影響力を行使して大きな役割を果たしたが,首謀者ではなく,当初は殺害を主導していなかった被告人に無期懲役を言い渡した事例。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反、私電磁的記録不正作出、同供用被告事件 最判平成19(2007)年8月8日判タ1252号173頁 裁判所サイト 不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条所定の不正アクセス行為を手段として私電磁的記録不正作出の行為が行われた場合であっても,同法8条1号の罪と私電磁的記録不正作出罪とは,牽連犯の関係にはない。
 
TBC顧客情報漏えい事件 東京高判平成19(2007)年8月28日 弁護団サイト 控訴・付帯控訴棄却。
 
損害賠償請求事件 東京地平成19(2007)年9月13日裁判所サイト 漫画家である原告らが、その著作に係る漫画を被告らにより無断でインターネットのウェブサイトを通じて自動公衆送信されたとして、被告らに対し、著作権(公衆送信権)の侵害に基づく不法行為による損害賠償をそれぞれ求めた事案。
商号使用差止等請求事件 東京地平成19(2007)年9月26日裁判所サイ 「e-zai.com」のドメイン名を使用してはならない等の請求が認容された事例
日めくりカレンダー用デジタル写真集事件 東京地平成19(2007)年12月6日裁判所サイ 365枚の花の写真を1年間の日ごとに対応させた日めくりカレンダー用デジタル写真集を作成した原告が,原告から同写真集の著作権の譲渡を受けた被告が,インターネット上に開設した携帯電話利用者向けのサイトにおいて,同写真集中の写真を携帯電話の待受画面用の画像として毎週1枚のみを配信し,かつ各配信日に対応すべき写真を用いなかったことが,編集著作物である同写真集の著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして,被告に対して,不法行為に基づく精神的損害についての慰謝料の支払を求めた事案
著作権侵害行為差止等請求事件 東京地平成20(2008)年2月26日裁判所サイ 被告の機関である社会保険庁の職員が,ジャーナリストである原告の著作物である雑誌記事を,社会保険庁LANシステム中の電子掲示板システムの中にある新聞報道等掲示板にそのまま掲載し,原告の複製権又は公衆送信権を侵害したとして,原告が,被告に対し,上記複製権又は公衆送信権侵害を選択的請求原因として,同掲載記事の削除及び原告のすべての著作物についての掲載の予防的差止め並びに損害賠償の支払を求めた事案。
平和神軍事件第1審 東京地平成20(2008)年2月29日判時2009号151頁 ネットでの名誉毀損の成立が否定された事例。
児童ポルノ法等違反事件 最判平成20(2008)年3月4日裁判所サイ 児童ポルノを日本国内で運営されているインターネット・オークションに出品し,外国から日本に居る落札者にあてて落札された児童ポルノを郵便に付して送付した場合,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条6項,4項所定の不特定の者に提供する目的で児童ポルノを外国から輸出したものといえるとした事案
ヤフオク集団訴訟 名古屋平成20(2008)年3月28日裁判所サイ Y社の提供するインターネットオークションサービスを利用して詐欺の被害にあったXら784名が,Y社に対し,詐欺の被害を生じさせないインターネットオークションシステムを構築すべき注意義務を怠ったとして,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において,Y社には上記サービスの利用者に対し詐欺等の被害防止に向けた注意喚起を時宜に沿って行う利用契約における信義則上の義務があるがその違反を認めることはできないと判断してXらの請求を棄却した事例。
損害賠償請求事件 大阪平成20(2008)年5月23日裁判所サイ 被告がその管理運営するインターネット上の掲示板に書かれた原告を中傷する書き込みを削除しなかったことは,被告の掲示板に係る管理義務に違反した行為であり,原告に対する不法行為となるとされた事例。
自殺幇助被告事件 大阪平成20(2008)年6月12日 インターネットの自殺サイトで知り合った者の心中事件で、生き残った者に自殺幇助罪の成立を認めた事例。
まねきテレビ事件第1審 東京地平成20(2008)年6月20日裁判所サイ 本訴。請求棄却。
日めくりカレンダー用デジタル写真集事件控訴審判決 知財高平成20(2008)年6月23日 裁判所サイ 東京地平成19(2007)年12月6日 の控訴審判決。
控訴を棄却した事例。
発信者情報開示等請求控訴事件 知財高平成20(2008)年7月17日判タ1274号246頁 裁判所サイ 原告が刑事訴訟事件における証人尋問を傍聴した結果をまとめた傍聴記をインターネットを通じて公開したところ、被告の管理・運営する「Yahoo!ブログ」に無断で掲載された事案で、創作性が認められないとして発信者情報開示請求を棄却した原判決が維持された事例。
営業表示使用差止等請求事件 東京地平成20(2008)年9月30日 裁判所サイ 原告が,被告がウェブサイト(ホームページ)等で営業表示として使用する「TOKYU」及び「tokyu」の表示は,原告の周知又は著名な「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号又は2号)である「東急」の営業表示と類似のものであって,被告による上記表示の使用行為は同項1号又は2号の不正競争に該当すると主張して,同法3条に基づき,被告に対し,「TOKYU」又は「tokyu」の表示を営業表示として使用することの差止め等を求めた事案で、 請求が棄却された事例。
ヤフオク集団訴訟控訴審判決 名古屋高平成20(2008)年11月11日 裁判所サイト 名古屋平成20(2008)年3月28日 の控訴審判決。
控訴を棄却した事例。
まねきテレビ事件控訴審判決 知財高平成20(2008)年12月15日 裁判所サイト 東京地平成20(2008)年6月20日 の控訴審判決。
控訴を棄却した事例。
損害賠償請求事件 東京地平成20(2008)年12月24日 裁判所サイ 芸能人である原告が,被告に対し,被告が,その管理運営する美容外科・歯科のホームページに,原告に無断で,原告の氏名及び顔写真並びに原告のコメントとする文書を掲載するなどして,原告の氏名権,肖像権及びパブリシティ権を侵害したとして,不法行為に基づき,損害賠償請求した事案で請求が一部認容された事例。
平和神軍事件控訴審判決 東京高平成21(2009)年1月30日判タ1309号91頁 逆転有罪。
磁気活水器事件 神戸地平成21(2009)年2月26日判時2038号84頁 「論評の域を逸脱していない」としてネット上での名誉毀損の成立が否定された事例。
マジコン事件 東京地平成21(2009)年2月27日 裁判所サイ 携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」等を製造,販売する原告任天堂並びに同ゲーム機用のゲームソフトを格納したゲーム・カード(DSカード)を製造,
販売する原告らが,被告らに対し,被告装置(R4 Revolution for DS)の輸入,販売等が不正競争防止法2条1項10号に違反するとして,同法3条1項及び2項に基づき,同装置の輸入,販売等の差止め及び在庫品の廃棄
を認めた事例。
愛南町漏えい事件 山口地平成21(2009)年6月4日 裁判所サイ 愛南町漏えい事案で請求が一部認容された事例。
新聞販売黒書事件 知財高平成21(2009)年9月16日 裁判所サイ フリージャーナリストである被告が開設したインターネットウェブサイトで,新聞社と新聞販売店との販売部数を巡る問題等を取り上げた過程で,原告作成に係る回答書を掲載した行為が,著作権侵害に該当しないとした事例。
オークション出品カタログ事件 東京地平成21(2009)年11月26日 裁判所サイ 被告がオークションの出品カタログ等に原告らが著作権を有する美術品の画像を掲載し,また,その一部をインターネットで公開した行為が,複製権及び公衆送信権を侵害に該当するとした事例。
 
 
凡例
 
判時  判例時報
判タ  判例タイムズ
岡村編 岡村久道編著「インターネット訴訟2000」(ソフトバンクパブリッシング、2000)
知的財産権判例検索 最高裁判所ウェブ「知的財産権判例の検索」
 <http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/$SearchForm?SearchView>
園田先生サイト   園田寿教授ウェブ「サイバーポルノに関する日本の裁判例」
 <ポルノ判例>
夏井先生サイト 夏井高人教授ウェブ「「コンピュータ関連判例の紹介(日本)」
 <http://www.isc.meiji.ac.jp/~sumwel_h/doc/juris/index.html>
町村先生サイト 「T&V HomePage Guide2 ウェブ判例集」
 <http://www.asia-u.ac.jp/~matimura/hanrei/index.html>

 

 注 意

本コンテンツは、研究の便宜を目的として掲載しているものにすぎず、如何なる意味でも内容の正確性や真性を保証するものではありません。誤字・脱字等、不正確な部分が含まれている可能性がありますので、引用等の際は、必ず原本を参照して下さい。(岡村久道)

最近では当方の著作物をまとめなおしたとしか思えないような、安易な「サイバー法書籍」が多数出ています。著者は情報は自由であるべきだと考えていますが、学問的もしくは実務的に無意味で、「他人のふんどしで相撲をとる」ことは、法律関係者として本当に恥ずべき行為です。本気で怒っています。判明し次第、厳正な法的手続きをとる予定ですので、ご注意ください。

お願い

さらに内容を充実させるために、ご存じの判例情報をお寄せ下さい。

 

 

 

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