4 サミットとハイテク犯罪

 

先進国首脳会議(サミット)では、一般に「ハイテク犯罪」(high-tech crime)という用語が使用されてきた。

まず、1996年6月のリヨン・サミットでは、議長声明で世界規模の通信ネットワークによって生じた倫理面・犯罪面の問題を検討する用意がある旨が述べられている。

このサミット以前にも、1994年のナポリ・サミットにおいて国際組織犯罪が初めて取り上げられ、同年11月にナポリで組織犯罪に関する世界閣僚会議が開催されたことに続き、1995年のハリファックス・サミットでは、現実的な措置を検討するための上級専門家グループの設置が明らかにされている。

このグループ「P8国際組織犯罪上級専門家会合」は、リヨン・サミットに「国際組織犯罪に関する40の勧告」を提出したので、別名「リヨン・グループ」と呼ばれている。それ以降、毎年のサミットで首脳に対し国際組織犯罪に関し報告しており、毎年のサミットからのマンデートの下で活動するという位置付けとなっている。リヨン・グループには「ハイテク犯罪サブグループ」が置かれており、欧州評議会の「コンピュータ犯罪専門家会合」とともに、主たる国際的フォーラムとして有名である。

デンヴァー・サミット(1997年6月開催)のコミュニケの40番では、「我々は、リヨンでの勧告を実施するための取組みを強化しなければならない。これからの1年、我々は、重大な関心を有する2つの領域に焦点を当てる。1つは、コンピュータ及び電気通信技術に対して国境を越えて介入するようなハイテク犯罪者についての捜査、訴追及び処罰である。もう1つは、犯罪者の所在地にかかわらず、すべての政府がハイテク犯罪に対応する技術的及び法的能力を有することとなる体制である。」(*外務省の仮訳による)と宣言されている。

さらにこのコミュニュケを受けて1997年12月、リノ米司法長官の呼びかけによりワシントンDCで開催された「G8司法・内務閣僚級会合」では「ハイテク犯罪と闘うための原則と行動計画」が採択され、1998年5月開催のバーミンガム・サミットでは、ハイテク犯罪対策をはじめとする国際組織犯罪対策が主要議題とされた。

同サミットのコミュニュケの21番では、「我々は、我々の閣僚により合意されたハイテク犯罪に関する10の原則及び10の行動計画を迅速に実施することに意見の一致をみた。」として、この行動計画を承認している(*外務省の仮訳による)。

なお1999年に開催されたケルン・サミットのコミュニケでも国際組織犯罪及びテロリズムに言及されている。

 

(C) copyright Hisamichi Okamura, 2000, All rights reserved.