4−4 著作権は「権利の束」
第3に、ひとくちに「著作権」と言っても、実は単一の権利ではなくて、「権利の束」であると言われるほど沢山の権利が集合したものであることに注意する必要があります。
次の表をご覧下さい。
(画面を「著作権法上の権利(平成9年改正法)」へ移動)
どうしてこんなに多くの権利ができたのかといいますと、複数の理由があります。しかし、その最大の理由は、科学技術の発展に対応する中で、色々なものを取り込んだという点です。前述のベルヌ条約が成立したのは1886年のことです。この条約の正式名称は、「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」として翻訳され、日本では明治32年に公布されています。この名称からも理解が可能であるように、もともとこの条約の対象とされた著作物とは「文学的及び美術的著作物」でした。つまり、紙メディアが中心だったのです。ところが、その後20世紀に入りますと、レコードだの映画だのラジオやテレビといった新しいメディアが続々と登場するようになります。それにあわせるためにベルヌ条約は次々に改正されて行き、それに応じて各種の権利が付け加えられて複雑になっていったということです。
(画面を「著作権法によるインターネットへの対応」へ移動)
実は、昨年の12月に、「WIPO著作権条約」と「WIPO実演・レコード条約」とがジュネーブで作られました。その舞台となったWIPOというのはWorld Intellectual Property Organizationの略称であり、「世界知的所有権機関」という言葉に訳されています。工業所有権と著作権の保護のための国際協力機構として1970年に設立され、1974年国連の専門機関となっているのです。ベルヌ条約に関する1971年のパリ改正条約により、ベルヌ条約の国際事務局をWIPO(世界知的所有権機関)に置くことが決められています。これを受けて日本の著作権法は今年の6月10日に一部改正が成立し、来年の年1月1日から施行されることになりました。その目玉商品となるのは電子ネットワーク環境での著作物利用への対応という点です。具体的には、公衆への送信行為全体を指す「公衆送信」に関する権利を著作者に、またサーバーへのアップロードなど公衆の求めに応じ、自動的に情報が送信される状態にする「送信可能化」に関する権利を実演家、レコード製作者に付与しています。これによって、例えば市販のCD等を音源とする音楽情報をインターネットなどで送信する際には、著作者、実演家、レコード製作者の許諾を要することになります。
4−5 著作権侵害に関する基本的な枠組み
著作権侵害に関する基本的な枠組みは、この画面のとおりです。
(画面を「著作権侵害行為の意味」へ移動)
「盗作」という言葉に示されているように、著作権侵害が成立するためには、既存の他人の著作物(原作品)を「利用して作品を作出」すること(依拠性)が必要です。換言すると、被告の著作物が原告の著作物と偶然の一致をみても、著作権侵害になりません。この点で、依拠性の有無に拘わらず成立する工業所有権の場合とは全く異なっているので、著作権は工業所有権のような純然たる独占的権利ではないといわれています。これは、ベルヌ条約の下でわが国の著作権法が無方式主義を採用していることの当然の結果として、同一又は類似した作品が複数現れた場合に、各作品が全く独自に作成されれば、各々の作品が保護されることになることに基づいていると考えられています。
また、いくら原作品を参考にしていても、既存の著作物の修正増減に創作性が認められ、かつ、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われてしまっている場合には、別個の新たな著作物であると考えられますので、やはり著作権侵害にはなりません。
著作権を侵害した場合、差止請求と損害賠償請求、名誉回復措置及び不当利得返還請求が待っています。
このうち、不当利得返還請求以外について図示すると次のようになります。
【表】権利救済措置
著作財産権侵害
著作者人格権侵害
損害賠償請求
◯(民法709条
・著作権法114条)但し慰謝料は原則的に不可
◯(民法709条)
但し慰謝料の請求が認められる
差止請求
◯(著作権法112条)
◯(著作権法112条)
名誉回復等の措置
×
◯(著作権法115条)
4−6 ブラウジングの著作権法上の位置付け
(画面を「ブラウジングの著作権法上の位置付け」へ移動)
コンテンツと著作権との関係を考える場合、他人の著作物をWeb上のコンテンツとして使用する場合の著作権法上の位置付けという問題と、自分の作ったWeb上のコンテンツに関する著作権をどのようにして保護して行くのかという問題と、この2つを分けて考えると分かりやすいように思います。
まず後者からお話しします。サーバに蓄積されたコンテンツにアクセスしてブラウザで閲覧する行為(ブラウジング)の著作権法上の位置付けという問題です。アクセスしたユーザーの端末のメモリー上に一時的に蓄積されることについては瞬間的かつ過渡的であるから複製とはならないというのが一般的な考え方です。しかし、通常はブラウジングの結果として端末のハードディスクにキャッシュデータとして自動保存され、端末の電源切断後も保存されることを考慮すれば、到底一時的とは言えないので、複製に該当すると考えるべきです。ただ、通常は、著作者であるホームページ開設者は、キャッシュされることも含めて無料で公開する意思を有しているので、著作権侵害にはならないという意味です。これに対し、閲覧のためにIDとパスワードとを要するホームページの場合は、正規の権利者にのみ閲覧及びこれに伴うキャッシュを許可する意思であると考えられるので、第三者が不正アクセスした場合には著作権侵害となりうるのです。
4−7 他人の著作物をウェブに使用する場合の著作権法上の問題
(画面を「他人の著作物をWebで使用する場合の著作権法上の問題」へ移動)
次に、前者の問題、つまり他人の著作物をホームページに使用する場合の著作権法上の位置付けを考えてみたいと思います。
ウェブで情報を発信しようとする場合、最初にホームページ開設者はFTPなどを使って自分の端末からサーバにデータを送ってサーバにコンテンツを蓄積することになります。この行為はコピーですので、著作権法上の複製に該当します。したがって、FTPなどを使って他人の著作物を無断でサーバにアップロードする行為は複製権侵害にあたります。著作者の名前を出していない場合は氏名表示権の侵害にもなります。また、これを無断でアレンジしてアップロードする場合は、翻案権侵害及び同一性保持権侵害にあたります。
次に、他人の著作物を無断でサーバに蓄積してインタラクティブ送信しうる状態に配置する行為は、著作者の公衆送信権侵害にもなります。また、市販のCDを音源とする音楽情報をリアルオーディオなどで流す場合には、レコード製作者の送信可能化権侵害にもなります。市販のCD以外では、さらに実演家の送信可能化権侵害にもなります。
著作権を侵害した場合、前述のように差止請求と損害賠償請求及び不当利得返還請求が待っています。
差止請求は侵害行為が終わってしまえば認められません。したがって、当該著作物をサーバ上から抹消してしまえば差止請求は認められず、損害賠償などだけの問題となります。
例えば他人が撮影した写真を使用する場合、その写真自体の著作権の問題と、その写真の被写体とされているものに関する権利の問題とを分けて考えなければなりません。
(画面を「素材の利用をめぐる問題点」へ移動)
ちなみに、無断で他人の顔写真を使うと、その他人との関係では人格権の一つである肖像権の侵害になり、裁判所に差止請求や損害賠償請求の訴訟や仮処分を起こされる可能性があります。この肖像権については、肖像権という言葉をはっきりと使っているわけではありませんが、日本の最高裁判所も認めているところです。したがって、人物が写っている写真をコンテンツに使う場合には、その人物の顔を特定できないような写真、つまり顔が写っていなかったり群衆写真でどこの誰なのか特定できないようなものを使うか、眼のあたりにマスクを掛けて特定できないようにしてしまうと言う必要があります。
その他人が一般人であれば、損害賠償請求の内容は原則として精神的損害に関する慰謝料だけですが、タレントの場合は肖像に経済的価値がありますので、逸失利益の賠償も認められます。つまり賠償額が多くなります。このようなタレントの肖像権のことを、キャラクター権とか商品化権とかいう言葉で呼んでいます。
もっとも、キャラクター権とか商品化権という言葉は、人間のタレントだけに使われているものではありません。例えば漫画やアニメのキャラクターについても使われています。しかし、漫画やアニメのキャラクターに人格権としての肖像権が認められるわけはありません。この場合のキャラクター権とか商品化権の法律的な根拠となっているのは、著作権です。つまり、美術の著作物である漫画や、映画の著作物であるアニメの著作権侵害をしていることになるのです。このように、キャラクター権とか商品化権と呼ばれるものも、その実態は肖像権侵害と著作権侵害との2本立てになっていることに注意が必要です。
著作権の話に戻ります。
以上を踏まえ、他人の著作物を適法に使用するためには、どのような手順をふめば良いのでしょうか。
(画面を「他人の著作物を適法に使用するための手順」へ移動)
この画面をご覧下さい。
おおよそ、このような手順でお考えいただければと思います。
その中で、少しだけ気になる点を補足しておきます。
「著作権の保護期間内かどうか?」と書いておりますが、著作物であっても保護期間が経過しておれば、パブリックドメインとして著作者の許諾がなくても自由にコンテンツとして使用することができます。勿論、ここに使用できると言っても、例えば写真をウェブに掲載するなど、あくまでも著作物としての側面での利用です。
著作権の保護期間は、自然人の場合は死後50年ですが、団体名義や映画の著作物、無名・変名の著作物は、公表後50年です。ついこの間までは、写真については自然人であっても公表後50年として例外扱いされていましたが、昨年12月の著作権法改正で、自然人であれば死後50年と改正されました。つまり、他の種類の著作物と同様になりました。但し、以上はあくまでも著作財産権についてであって、著作者人格権についてはこのような制限はなく、死後いつまでたっても損なうような行為をすることができないことに注意して下さい。
保護期間が経過した著作物がパブリックドメインとして著作者の許諾がなくても自由に使用することができるということは、日本の最高裁判所も古美術品のケースで認めています。しかし、実際には古美術品は、美術館や博物館、もしくは所有者の家の中に収蔵されていたりするのが普通です。したがって、これを写真に撮ろうとすると、管理者の許諾を求めるほかありません。その許諾については、写真の使い道であるとか、色々な条件が付けられたり、金銭を請求されることもあります。これは著作権の効果ではありません。しかし、例えば書籍にだけ使うという条件が付けられていたのにウェブに掲載したとかいうように、付けられた条件に従わなかった場合は、契約違反となります。
保護期間が経過する前の著作物であっても、著作権法は著作物が自由に使える場合を規定しています。今、プロジェクターでご覧頂いているのは文化庁のサイトです。この中で最も重要なのは「引用」です。アメリカ法で言う「フェア・ユース」と類似しています。この点については藤本弁護士がご説明する予定ですので、それに譲ります。
このような著作物が自由に使える場合にあたらない場合には、著作権者から使用許諾を受けるか、著作権の譲渡を受けるかしか方法がありません。後からCDロムにするなど自由に使い回しをするためには著作権の譲渡が望ましいことになります。特に、クリエーターにウェブのコンテンツをオーダーメメイドするような場合には、発注に先立ち事前に譲渡という条件を付けておくのがベストです。しかし、そういったオーダーメイドの場合を除けば、譲渡となると著作者の心理的な抵抗が強かったり、使用許諾に比べて多額の代金を求められるのが普通です。著作権の譲渡を受ける場合、単に契約で譲渡すると書いただけでは不十分です。例えば翻案権つまりアレンジする権利は譲渡の対象から外されたものとして取り扱われることになるからです。また、著作権法の解釈として著作者人格権は譲渡できないものと考えられています。そこで契約実務では、著作者は譲受人や譲受人から許諾を受けた者に対しては著作者人格権を行使しないことを予め包括的に約束するという内容の合意を取り付けています。しかし、この条項が有効なのかどうかについては、裁判上確立されていない状況です。
(画面を「音楽関係の著作権処理」へ移動)
次に使用許諾ですが、音楽についてはJASRACつまり日本音楽著作権協会が、「作詞家、作曲家、音楽出版社など音楽の著作権者から権利の委託を受け、また、世界の著作権管理団体と契約を結ぶことによって、音楽著作権を管理している日本で唯一の団体」(http://www.jasrac.or.jp/jhp/gaiyo.htm)です。JASRACのウェブをご覧下さい。このサイトのFAQには「インターネット(World Wide Web)における音楽著作物の利用について」と題する記載があり、参考になります。これに書かれているように、JASRACでは、現在インターネット等ネットワークを用いた利用形態に関する使用料率や許諾条件などの使用料規定を策定中です。しかも、「使用料規定が決まるまでの間、有料番組や著作物販売など営利目的で著作物を利用する場合は、使用者と覚書を締結し、保証金をお支払いいただくなど一定の条件の下で、暫定的に使用を許諾しています。納付していただく保証金は使用料規定が実施された段階で清算されます。無料サイトなど営利性の低い場合については、企画書や使用曲目等を報告していただき、利用状況等を確認させていただきます。暫定的に使用許諾することが決まれば、規定が実施された時に著作物の使用開始にさかのぼって使用料をお支払いいただく旨の承諾書を、当協会に提出していただくことになります。」と書かれています。しかし、なかなか決まらないので、みんな困っています。それに、後から高い使用料を請求されるおそれがあるので、ウェブでの音楽ビジネス関係者は予想が付かないとして本腰が入れられない状況です。
4−8 著作権侵害とプロバイダの責任
以上のように、著作権の処理というのは、はなはだ面倒です。
もし無断で他人の著作物をウェブで使用するならば、直接侵害行為を行った者つまりウェブの開設者が差止請求や損害賠償請求を受けることは言うまでもありません。
しかし、著作権違反のウェブを含んだサーバを保有していたプロバイダも、差止請求の対象になる可能性が高いものと考えられます。差止請求は無過失責任だからです。これに対し、損害賠償責任は過失がなければ負わされません。プロバイダに過失が認められるかどうかについては問題があります。アメリカでの判例の傾向によれば、少なくともプロバイダが侵害行為の存在を知るに至った後は、これを放置していた場合、責任が認められることになりそうです。先ごろ東京地裁でニフティ事件の判決が出されました。これは名誉毀損を放置したということでニフティが責任ありとされた事例です。小樽商科大学の町村助教授のウェブに判決文が掲載されています。
もっとも、プロバイダが紛争に巻き込まれるのには、それなりの構造的要因もあります。ホームページには、開設者が誰なのかが明記されているとは限りません。もちろん、明記すべき法律的な義務もありません。ホームページ開設者の独自サーバであれば、JPNICでドメイン名の持ち主を調べれば、誰が直接の加害者なのかが第三者にも調査可能です。ところが、プロバイダのレンタルサーバを使っている場合、どこのプロバイダのサーバにウェブが置かれているのかまでは分かっても、それから先はプロバイダが教えてくれなければ第三者には調査する方法がないのです。メールでウェブ開設者宛に文句を言って削除するのであればよいのですが、そうでない場合には、裁判所に持って行こうとしても、加害者の名前すら分からないのでは、どうしようもないのです。そこで、被害者側としては、ともかくプロバイダにクレームを付けることになります。ところがプロバイダは電気通信事業法で通信の秘密を負っていますので、安易に加害者として名指しされた会員の住所や氏名を教えると、後で責任を負わされたり世間から非難されることになりかねません。著作権侵害の事件ではないが、例のベッコアメ事件で、ベッコアメが捜査機関に対し、ポルノホームページの持ち主の名前を教えたことでインターネット関係者から非難されています。つまりプロバイダは板挟みの立場にあるのです。
4−9 リンクと著作権
(画面を「『無断リンク』は著作権侵害にあたるか」へ移動)
以上の点と関連して、リンク先に無断でリンクを張ることが著作権侵害にあたるかどうかについては、議論があります。
具体的には、著作権の中心概念である複製権(あるいは翻案線)侵害に該当するかどうかという点が議論されてきました。
最近も、米国のトータルニュースという会社が、ワシントンポストやタイム、ロイターといった、新聞社など他社のウェブを複数リンクして情報をユーザーに提供するサービスを行っていたところ、リンク先の会社から訴訟を提起されたという事件が発生しました。
この事件では、トータルニュースのウェブのフレーム内にリンク先のコンテンツがそのまま表示されて、まるでトータルニュースのもののように見えてしまい、他方で他のフレームにはバナー広告を掲載しているという点が問題とされました。
この事件は、フレームを使用したリンクを止めるという内容の和解で終わったようであり、さらに97年12月16日には日本の大手新聞社の全国紙5紙も、連名で中止を請求する抗議文を送付しています。このような極端な場合はともかくとしても、リンクによって、リンク元がリンク先のコンテンツを複製しているわけではありません。リンクのクリックによってユーザーはリンク先のコンテンツに直接アクセスしているのです。リンクは単にリンク先からユーザーの端末に向かってのコンテンツ送信を依頼しているだけです。したがって、原則として複製権の侵害にはならないものと考えられます。
もっとも、これに対し、リンクによって、自分のコンテンツの中に、他人のコンテンツの一部である画像をあたかも自分の画像のように表示させたり、フレームを使って自分のコンテンツの一部であるかの如く誤認させたような態様の場合などについては、例外的に著作権侵害になる可能性もあります。先に「原則として」と述べたのは、こういった例外的なケースも存在するからです。
次に、前述のとおり、電子ネットワークへの対応などを目的として昨年成立した「WIPO著作権条約」と「WIPO実演・レコード条約」とに対応させるために、平成9年の著作権法改正で、公衆への送信行為全体を指す「公衆送信」に関する権利を著作者に、またサーバーへのアップロードなど公衆の求めに応じ、自動的に情報が送信される状態にする「送信可能化」に関する権利を、実演家、レコード製作者に与えています。
したがって、複製権など以外にもこれらの著作権法上の権利を侵害するかどうかも問題となります。
しかし、リンクは、リンク先へのアクセスを希望するユーザーが、いちいち直接URLを入力する手間を省いて、クリックさえすれば飛べるようにしているだけです。そして、もしリンク先がユーザーの端末に向かってのコンテンツ送信を断りたければ、特定のユーザーIDやパスワードの入力を要求すれば足りるわけです。そうしておけば、見られたくない人がアクセスしてしまうことを防ぐことができるのですから、実質的に考えますと、リンク先のウェブが、そういう処理もせずに、直接URLを入力してアクセスしたユーザーに対しては自由に送信できるようにしている以上、なぜリンクを張った場合だけが著作権侵害になってしまうというのか、理解に苦しみます。つまり、リンクを張ることによって、リンク先の持っている、公衆送信する権利や送信可能化する権利もしくは自由も、少しも害されていないのです。
もっとも、リンクを張る際に、リンク先に対しその旨のメールを出しておくことがネチケットとして望ましいことは言うまでもありません。しかし、現実空間で、モラルに反した行動をしても直ちに法律違反になるものでないことと同じで、それは法律的に著作権侵害となるということではなく、あくまでモラル(礼儀)の問題にすぎないのです。
以上の理由により、リンクを張ることは原則的には著作権侵害にならないものと考えます。
このように著作権違反にならないと考えると、暴力団が自分のウェブに「友好団体」として日本弁護士連合会のウェブをリンク先とするリンクを張ったような場合でも差止めることができないので不適切ではないかという疑問もあります。しかし、このような場合の問題の本質は、日本弁護士連合会の名誉や信用が不当に損なわれることになるという事実ですので、著作権の問題と言うよりも、むしろ名誉や信用の毀損行為として、民法709条に基づき対処すべき事柄であるように思われます。また、あまりに悪質であれば、場合によっては、刑法上の名誉毀損罪や偽計による業務妨害罪の対象になるものとして、告訴などの措置をとるべきケースもありうるのではないかと考えます。つまり、問題の中心は名誉や信用の侵害ですので、著作権侵害の問題ではないのです。
ところが、今年( 1997 年)の 11 月 10 日に、日本新聞協会編集委員会がウェブ上で、「ネットワーク上の著作権について」という見解を発表しました。この見解は、新聞・通信社が発信する情報についてリンクを張ることについて、著作権との関連で、まず発信元の新聞・通信社に連絡、相談するよう求めています。この見解は少し表現が曖昧なのですが、前述のように、リンクを張ることは原則的には著作権侵害とはならないわけですから、もし一般論としてリンクを張るには連絡、相談が著作権法との関係で法律的に必要であるという意味であれば、正当でない解釈だということになります。そうではなくて、法律的な義務はないという前提で、法律とは無関係に単に倫理的な立場からお願いしているだけなのであるとしても、リンクはウェブをウェブたらしめる中心的技術ですので、このように曖昧な一般論を述べると、新聞が守るべき「表現の自由」に委縮的効果をもたらすことになり、その意味で、やはり慎重さを欠いており妥当でないものと思われます。
(日本新聞協会のウェブはhttp://www.pressnet.or.jp/です。「嫌み」のつもりで敢えてリンクを張らずにドメイン名を記載しておきます。)