Hisamichi Okamura 「Webコンテンツと知的財産 〜 著作権の概要と新しい流れについて 〜」


 3 Webと商標及び商号

 

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 右の図をクリック 商標および商号の保護 

 

 著作権のお話に入る前に、商号と商標とについて、少し説明を加えておきたいと思います。

 商号は法務局に登記を、商標は特許庁に登録をすることができます。正確に言えば、会社を設立する際には商号を決めなければ登記申請を受け付けてもらえず、登記されなければ会社を設立したことになりません。

 登記や登録は申請順で、いわば早い者勝ちです。言い換えると、他人が先に登記した商号や登録した商標を勝手に使用することはできません。

 勝手に使用できないということの意味は、単に後から登記を申請したり登録を出願しても受け付けられないという意味だけにとどまりません。これを無断使用されることによって権利を侵害された被害者は、たとえその商号や商標が有名でなくても、裁判所に頼んで使用の差し止めをしてもらったり、損害賠償請求をすることができるという意味です。

 ところが、一字一句違わなければ侵害とならないとすると、わざと一字だけ違えた「紛い物」が世の中に氾濫することになって困ります。そこで、厳密に同一でなくとも、一定の類似性が存在すれば侵害が認められることになります。例えば漢字の「一太郎」と平仮名の「いちたろう」との間であれば、ビジネスの対象も同じであれば誤認混同を起こすおそれが強いので、類似性が認められることになると思われます。

 しかし、登録された商号が独占権を持つのは、原則として本店同士が同一の同一市町村(政令指定都市等では同一区)内にある場合に限られます。したがって、例えば徳島市に本店がある「一太郎商店株式会社」と同一の商号の会社を、岡山市を本店として設立することは原則的に許されています。つまり、これを設立しようとすれば、岡山の法務局では設立登記を受け付けてしまうことになります。

 次に、商標は商品の種類によってグループ分けされています。したがって、ソフトの登録商標である「一太郎」と同じ商品名を、日本酒の商品名として付けることは、原則として商標法の上では許されることになります。勿論、誰かが日本酒の商品名として「一太郎」という商標の登録を受けていない限り、という留保はつきます。

 何れにしても、ここで重要なのは、どちらにも、そういう限界があるという事実です。

 なぜ、いちいち「原則的」というのかを説明しますと、これには例外があるからです。

 全国的に、あるいは全世界的に有名なブランドの「紛い物」が出現した場合、例えば、名古屋に「株式会社ソニー」というパソコンショップが出現した場合に、本物のソニーの本店が東京だという理由で手が出せなかったり、「一太郎」という商品名の格安パソコン・ハードが出現した場合にジャストシステムが手出しできなかったりというように、全く対応ができないとすると、「まがい物」を放置することになって、やはり困った事態になります。このように、有名なブランドにつき、わざと「紛い物」を作って誤認混同を起こさせようとする場合は、商号における地域区分や商標における商品の種類による区分といった壁を乗り越えて、「不正競争防止法」という法律により、損害賠償請求や差止請求などができるという仕組みになっています。この差止請求というのは実は非常に強い力を持っておりまして、現に法務局が受け付けて登記が完了した会社の商号を変更せよということすら判決で命令じることができるのですから強力です。

 

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 右の図をクリック img005.GIF (53833 バイト)

 

 次に、ドメイン名に他人の登録商標を使用することは許されるのでしょうか。

 ドメイン名の取得も、申請順、つまり早い者勝ちが原則です。その意味では商標などと同様です。しかし、登録する機関が異なっています。つまり、JPNICは、いちいち商標登録の有無を確認することなく先着順に割り当てていますので、このような問題が起こります。

 アメリカではMcDonald’s,MTV,Avon,ABC,Apple,Intelなど名前を、勝手に第三者がドメイン名として登録してしまい法律紛争になったという報道がなされています。

 日本でも、matsuzakaya.co.jpというドメイン名が、百貨店の松阪屋以外の企業に登録されたり、1997年1月には、ある企業が、自社のウェブ上で、katokichi.co.jpやcecile.co.jpなど売買用のドメイン名を公開し、食品メーカー加ト吉が、この企業からドメイン名の買取請求を受けこれを拒絶するという事件が発生しています。

 ドメイン名に特定の商標を使用することが商標権侵害にあたるかどうかについては、争いがあるのですが、アメリカの特許商標庁は場合によっては侵害にあたると考えているようです。これに対し、アメリカの判例は確立していません。幸いにも、日本の裁判所に持ち込まれたことはないようです。

 ご存じのとおり、ドメイン名をめぐる紛争はCOやCOMに集中したことが原因であるという見地から、現時点では、アメリカで言うトップレベル、その他の国で言う第2レベル属性の種類を増やすという方向で議論が進んでいます。

 本日は、別の講演でこのテーマが論じられていますので、詳しいことはそれに譲りたいと思いますが、ドメイン名を含め同じく「早い者勝ち」であっても登録(登記)受付機関がバラバラに別れている上に、商号では地域毎に、商標では商品グループ毎かつ国毎に適法に当該名称の使用が複数にわたり認められています。例えば“SANYO”を例にとりますと、電機メーカーのサンヨーもあれば、山陽特殊鋼やレインコートのサンヨーという会社も商品もあります。したがって、ドメイン名取得につき、1つの会社だけを正しい名義人であると決めることには、もともと無理があると考えられます。

 わが国の商標法の解釈としても、商品との関連で使われなければ「商標の使用」にはあたらないのです。したがって、他人の商標と同一のドメイン名を登録しても原則としてわが国の商標法違反にはならないと考えられるのです。但し、ネットワークサービスの場合には議論があることに注意願いたいと思います。

 結局、商標権侵害となるかどうかは当該ドメイン名だけでなく、そのWeb上のコンテンツとの関係で判断されなければならないものと考えることができます。このように考えても、ドメイン名の使用が悪質な場合は、前述の不正競争防止法による対処も考えられるので、それほど心配はないと思います。

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