未 成 年 者 の 事 故 と 責 任

 

岡村・堀・中道法律事務所 弁護士 堀  寛


 私の子供が運転する単車が、横断歩道を横断中の歩行者をはねて重傷を負わせてしまいました。


Q1 未成年者であるお子さんの損害賠償責任

 この場合、私の子供は未成年者ですが、未成年者でも損害賠償責任を負わなければならないのでしょうか。


A1

 日本の法律では、お子さんが単に未成年者であるからというだけで責任を負わなくてもよいことにはなりません。未成年者のうち、不法行為当時に責任能力を有していなかった場合には、責任無能力者として、損害賠償責任を負わないことになっています(民法712条)。

 ところで、この責任能力といいますのは、自分の行為の結果が法的に見て何らかの責任が生じるか否かを判断する能力を意味するものとされておりまして、具体的には小学校を卒業する12〜13歳程度になれば責任能力があるものと考えられています。

 このような責任能力のない未成年者が不法行為により第三者に対し損害を与えた場合には、未成年者が責任を負わない反面、監督義務者である親が十分な監督義務を尽くしたことを証明しない限り、未成年者の親が賠償責任を負うことになっています(民法714条)。

 従いまして、Q1の場合には、先に述べました基準によりますと、加害者本人である子供さんには責任能力がなく、賠償責任を負いませんので、監督義務者であるあなたが損害賠償を負うことになります。

そして、親として十分な監督義務を尽くしたことを証明することは容易なことではありませんので、くれぐれもこのようなことを起こさないよう日頃から子供さんに対して十分注意される必要があります。


Q2 親であるあなたの損害賠償責任

 親である私自身も損害賠償責任を負わされることはあるのでしょうか。


A2

Q1で御説明しましたとおり、同じ未成年者であっても、子供さんが18歳であれば責任能力があると考えられます。そこで、加害者に責任能力がある場合でも親が損害賠償責任を負うかが問題となります。

 このような場合につきまして、裁判例でも、監督義務者である親に不注意があり、その不注意と未成年者の不法行為によって発生した損害との間に相当因果関係があれば、一般の不法行為責任(709条)を負わされた事例があります。

 具体的には、

(1) 監督義務者が相当の監督をすれば事故を防止できたこと、

(2) そのような監督をすることが現実に可能であったこと、

(3) 監督をせずに放置していた場合に事故の発生する可能性が高いこと、

等の基準に当てはまる場合には、相当因果関係が認められるものとされています。例えば、未成年者の子供が以前より無免許運転や飲酒運転を繰り返していたにもかかわらず、親が注意あるいは制止することなく、これを放置していた事実が認められる場合に相当因果関係が認められ、加害者の親が損害賠償を負わされた事例があります。

 次に、一般の不法行為責任以外に親が責任を負わされる法的根拠として、自動車損害賠償責任保険法(以下、自賠法といいます。)上の運行供用者責任(自賠法3条)が考えられます。

 この運行供用者責任は、自賠法により人身事故について車両の所有者等が負う損害賠償責任のことを意味します。

 そして、現実に運行供用者責任を負わされる場合としては、車両の所有者が誰であるかによって判断が分かれますので、以下では場合を分けて考えます。

 まず第一に、親が所有する車両の事故に関する親の責任につきましては、一般に運行供用者責任が肯定されています。

 第二に、子供が所有する車両の事故に関する親の責任につきましては、一般に親子間の事情により、次のように場合を分けて考えられています。すなわち、・・・

(1) 親が車両の購入や維持管理等の費用を負担していれば、親の運行供用者責任が肯定される傾向にあり、

(2) 親が車両の購入や維持管理等の費用を負担せず、子供が負担し、専ら子供のみが使用し、親との間には親子の身分・扶養の関係があるに過ぎない場合には、親の運行供用者責任が肯定と否定に分かれ、

(3) 単に、親子の身分関係があるに過ぎない場合には、親の運行供用者責任は否定的に解されています。

 このように、加害者に責任能力がある場合には、加害者側親子間の具体的な事情に基づきまして、親の責任の有無が判断されることになります。

 従いまして、Q2の場合には、加害者側の具体的な事情がわかりませんので、断定はできませんが、民法あるいは自賠法を法的根拠として、先に述べましたような各基準に該当する場合には、親が損害賠償義務を負わされることになります。

 以上のように、子供さんに責任能力がある場合にも、親として損害賠償責任を負わされる可能性があります。

以 上

 

 


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法律問題は、事実関係や裁判所の事実認定の微妙な相違により、全く結論が異なることになる場合が多いというのが実状です。また、学説が対立する問題は多く、判例は常に変更される可能性があります。以上の結果、実際に紛争になっていたり、もしくはそうなる可能性がある事案等について責任ある判断をするには、必ず現実空間において法律専門家に相談を受けていただくことを要します。したがって、本ページの記載内容に関しては、あくまで参考として利用いただくものとし、当事務所及び当職は一切責任を負わないことを利用条件とします。


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